韓国の子供への名付け ハングルと漢字の混用名が法律でOKになるまで

この話。

2人とも外国籍のご夫婦が娘さんの出生届を出そうとしたら「漢字とカタカナをミックスした名前は受け付けられない」と言われた話 - Togetter
https://togetter.com/li/1731240

 外国人の名前を文書にする時の役所のルールとしては「本国で使われている名前の読みをカタカナで表記する」というのが第一原則で、例外として「中国と韓国の漢字圏の国で使われている名前は、日本で使われる漢字の範囲内で漢字で表記できる」とする。

だから普通は、全てカタカナか、全て漢字で表記することになるのだが、提出されたのは漢字とカタカナを混ぜた名前だった。

役所はルール上できないと一度は拒否したが、漢字圏の韓国と、英語圏のフィリピンの国籍の夫婦の子供だったこともあり、ルールに適応していると判断され漢字とカタカナの混用での出生届を認めた。

一方で韓国籍の父親は、漢字とカタカナだけでなく平仮名での出生届もできるようにしてほしいと、ルールの拡大を要望している。

しかし、平仮名表記で出生届を出そうが、外国籍なのだから本国に本国の言葉で表記される「本名」があるはずで、日本国内での表記はあくまで本国語の名前の翻訳である。

仮に韓国籍の親が日本での子供の出生届に「朴 世界サナ」と名前を書いて提出するなら、それは韓国で「朴 世界사나」と氏名登録されていることが前提となる。

というわけで韓国の子供の名付け方を日本語で検索したら、トップのサイトに「韓国ではハングルと漢字を混用した命名は禁止」と書いてあった。これが本当なら日本の役所に届け出られた「朴 世界サナ」という名前は偽名ということになる。

本当かなぁと韓国語で検索をしてみると現在の事情がわかった。

韓国でも子供の名前にオリジナリティを出したい親はいて、ハングルと漢字を混用した名前で出生届を出して役所に拒否されるケースが複数起きてたそうな。

しかし役所が「ハングルと漢字を混ぜた名前はダメ」の根拠とするものは法律そのものではなくて、附則として書かれた例規の1文。だから2015年、ある親が役所を裁判に訴えて、裁判所は漢字とハングルの混用名を認めた。

ところがこの判決をもっても例規はそのまま残ったため、役所で混用名の出生届が拒否されるケースがあった。2016年、「羅 贇별」という名前を認めてもらうために親が裁判を始めた。

딸 이름 한자·한글 혼용하면 안되나요?…부모 '헌법소원' | 연합뉴스
https://www.yna.co.kr/view/AKR20160721176600054

主張は、予防接種や健康保険など手続きを早く終えるために一時的と思ってつけた子供のハングル名を漢字ハングル混じりの名前に改名したい、というものと、混用名禁止の根拠となっている例規の削除を求める、というもの。

1年後の判決で、2つの主張は棄却や却下がされてしまったが、改名に関しては抗告審で親の主張が認められ、ついに娘に「贇별」という名前をつけることができた。

「漢字+ハングル混用してつけた名前の2年ぶりに取り戻し... 裁判所改名許可| 聯合ニュース
https://www.yna.co.kr/view/AKR20170316167700054

 一方で、この裁判はニュースとして韓国内でも注目され、国会議員が動くことになり、混用名を可能とする新法案が成立することとなった。

이름의 기재문자와 관련된 가족관계등록사무 개정 2017. 6. 29. [가족관계등록예규 제509호, 시행 2017. 6. 29.] > 규칙/예규/선례 > 본문조회 | 종합법률정보
https://glaw.scourt.go.kr/wsjo/gchick/sjo330.do?contId=2231719#1623813524502

5.名前のハングル·漢字表記

姓名欄の漢字欄にハングルと漢字(人名用漢字の制限範囲内のもの)を混合して表記した出生届などは受理することができる。 

1.改正理由

○お名前の漢字表記部分にハングル·漢字混合表記も可であることを明確に

2. 主要内容

○氏名欄の漢字欄にハングルと漢字(人名用漢字の制限の範囲内のもの)を混合して表記した場合でも、その申告を受理することができることを定める(第5号)

 だから4年前まで韓国では漢字とハングルを混用した名前は「禁止」だったが、新法によって現在は韓国の役所で漢字とハングルの混用名をつけて出生届を提出しても拒否されることはない。韓国籍の親が「朴 世界사나」という名前で韓国で出生届を出しても受理されるし(5文字規定もクリア)、日本の役所に「朴 世界サナ」と提出しても現在の日本の外国人の名前翻訳のルールの上で何の問題もないことが分かった。