『あかつき戦闘隊』大懸賞問題と「ポケットの中の戦争」

「泣ける」の評価に「失敗だった」 戦後世代がガンダムで描いたもの [戦後80年 被爆80年]:朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASTBZ0SWNTBZPITB00DM.html

物語に出てくる少年たちの軍人の階級章や薬莢集めの趣味の発想のもとに、高山文彦監督らスタッフの子供時代のミリタリーおもちゃブームがあったと。

監督の記憶に残るのは、1968年に起きた「あかつき戦闘隊大懸賞」問題だという。こんな社会騒動があったと初めて知った。

少年サンデー誌上で、当時連載中だった戦記漫画の「あかつき戦闘隊」にちなんだミリタリーグッズの読者懸賞企画が行われた。懸賞品には日本軍や米軍のグッズ、ナチスドイツの旗などがあった。児童文学作家らが「懸賞品にするな」と反対声明を出し小学館に抗議した。小学館は当初取り合わなかったが新聞やテレビが取り上げ大きな議論となると小学館側は賞品について今後配慮すると回答を出した。

こんな騒動らしい。検索してみると、当時小学館に抗議した児童文学作家側の文章が出てきて面白い。

『児童文学の旗』(古田足日 理論社 1970)  0 <『あかつき戦闘隊』大懸賞>問題
https://www.hico.jp/ronnbunn/furutataruhi/jidoubungakunohata/231-258.htm

(略-『あかつき戦闘隊』大懸賞の賞品をまず書きしるしていった・古田)四・五等は、ドイツ軍コレクションでナチスの軍旗・鉄十字章など、以下九等までの賞品はソ連軍ピストル、ドイツかアメリカの鉄カブトなどです。
 海兵生徒の正装に身をかためた少年の写真のほか、賞品の写真を見て、私たちは少年時代のことを思い出しました。私たちの少年時代、少年雑誌はこうした写真や絵でいっぱいでした。それが、知らず知らずのあいだに少年たちを軍国主義へと導いていく役割のひとつをはたしました。
 この懸賞のあおり文句には「どれも実物そっくりのモデル!! かっこいい!!」とあります。私たちの友人のなかには、海兵や予科練に行き、ついに帰ってこなかった人びとがいますが、この人びとを死にさそいこんだ入口のひとつは、その制服のかっこよさでもありました。私たちは海兵の正装に身を切られる痛みを感じます。ナチスの軍旗、鉄十字章に至っては、人類の悪夢の歴史の象徴です。
 これらを”かっこいい”といって、子どもに与えることは、ふたたび戦争へと進んで行くあやまりをおかすことになります。もしもこれを与えるなら、人類の痛苦の記念として与えるべきです。懸賞という特殊の価値のある賞品として与えるべきではありません。
 私たちのいうことを、考えすぎだ、おとなの感傷だという人もいるかもしれません。だが、教科書から太平洋戦争批判の文章が消えていく時代です。武器や、血に汚れたナチスの軍旗のモデルを堂どうと賞品に出すことは、子どもに侵略戦争を罪悪と感じさせない気持をうえつけていきます。こうした気分がひろがり、養われたとき、戦争の火はつきます。そのときになってあわてても、もぅおそいのです。
 少年誌がここまで来たことをみなさんにおしらせし、あわせて小学館及び賞品提供者の中田商店にこの懸賞の撤回を求めます。

国会図書館デジタルで「『あかつき戦闘隊』懸賞問題」などと検索しても、実に多くの文献が発掘できる。

検索結果 - 国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/search/searchResult?keyword=%E3%80%8E%E3%81%82%E3%81%8B%E3%81%A4%E3%81%8D%E6%88%A6%E9%97%98%E9%9A%8A%E3%80%8F%E5%A4%A7%E6%87%B8%E8%B3%9E%E5%95%8F%E9%A1%8C&fullText=true

漫画史では、1960~70年代に起きた漫画に関わる事件だと、「ハレンチ学園」が問題視された悪書追放運動ばかり取り上げられるが、子供との関わりが問題視されたのは性的な漫画だけでなかったと。(「懸賞問題」はあくまで漫画ではなく雑誌編集・出版社との問題であるが。)

 

しかし冒頭の記事に戻ってみると、今の視点で当時の漫画批判運動を語る文章はだいたい、批判運動していた側が「子供をなめてる」「表現の自由を脅かしてた」など批判されるのが常なのだが、そうではない語り口が新鮮だった。別に運動を肯定している語り口でもないのだけど、当時の社会情勢や時代性も理解した上でのニュートラルな語り口というか。

そうした感性が「0080 ポケットの中の戦争」の物語を作り上げたんだろう。