「『吉田沙保里を破ったアメリカ人の感動エピソードはデマ』はデマ」のデマ

タイトルは悪ノリですが…

ツイッターで、レスリング女子で吉田沙保里選手を破って金メダルに輝いたヘレン・マルーリス選手についての感動エピソードがツイートされていたところ、それはデマだと追及するブログが出てきて、さらにそれはデマだと指摘するネットメディアが出てきたと。



最初に広まった感動エピソードがこれ。

アメリカ初の金メダル、ヘレン・マルーリス選手24歳は、12歳の時にアテネ五輪吉田沙保里選手を見て、レスリングをやめさせようとする両親を説得し続けることができた。この12年、吉田選手は世界中にレスリングを広め、少女の夢を応援したのだ
http://togetter.com/li/1013782


これに対して、あるブロガーが、ネットでどれだけ海外メディアや本人のwebサイトを探しても、このエピソードにあたるソースが見つからなかった、としてデマと指摘。

このソースはどこにも見つからない。海外サイトのエピソードにも全く載っていない。確認できるのは、マルーリスが「兄の影響で7歳のときにレスリングを始めたこと」、「親がずっと支えてくれたこと」だ。マルーリスは24歳なので、7歳のときというのは吉田が世界チャンピオンになるはるか前のこと。
http://archive.is/sEltm

この指摘に対して、ネット上では「いやデマじゃない」「テレビで聞いた」という声が出てきて、ネットメディアが「デマというのはデマ」だとして、まとめた。

吉田沙保里を破ったアメリカ人の感動エピソードはデマ」はデマ テレビでNHKの実況が紹介していた - ねとらぼ
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1608/19/news103.html
実際はNHKの中継で、両選手の入場のときに実況が取材を元にこのエピソードを紹介していました。さらに、TBSで8月19日13時55分から放送された「ゴゴスマ」内でも紹介されています。


そして今回、上記ネットメディアの記事の内容について言及する。



NHKの実況?
上の記事では、「NHKの実況が紹介」と見出しを打っている。しかしこれはデマだ。吉田沙保里選手の決勝を担当したのは日本テレビ河村亮アナウンサーであり、マルーリスのエピソードを紹介したのも河村アナだ。(河村アナの実況は一部で「ポエム」「作文」「資料読みしかしない」と嫌われていて、NHKの実況アナと混同すると怒られちゃうぞ)



NHKの中継?
また「NHKの中継で」と書かれている。しかし地上波中継したのは日本テレビであり、NHKの地上波では録画で放送された。NHKBS1でも中継されていたというが中継内容は同じ。(ただし、NHKラジオでも中継放送されていた。)



吉田沙保里選手のおかげでレスリングをやめずにすんだ?
上の記事では、「アテネ五輪のときに吉田選手の優勝する姿を見て憧れを抱き、両親に一時はレスリングを続けることを反対されながらもここまで上り詰め」たという感動エピソードは、実況アナが紹介していたと書いている。
河村亮アナウンサーが、試合前に紹介したマルーリス選手のエピソードは次のようなものだ。

4連覇に向けた決勝が今、始まろうとしています。
この4年間、ロンドン以降、世界のこの階級、強敵は打倒吉田沙保里
その1年で燃えてきました。
当然、吉田はその流れを知っています。
今日の相手、アメリカマルーリス、24歳、アテネオリンピック吉田沙保里のその優勝のシーンをテレビで見ていました。
いつか自分はその頂へ。
ただ吉田はその言葉を聞いてそれがチャンピオンの宿命。
十分にその立場を自覚しています。

ヘレンルイーズ・マルーリス。
アメリカ、24歳。
かつてはレスリングをやめようと思った、両親の説得がありました。
2004年、吉田が優勝したアテネ、その種目に採用されて両親は、このレスリングを続けることを許可しました。
http://www.gorin.jp/video/5089176580001.html

アテネ吉田沙保里選手を見て憧れたというエピソードも、一時は両親にレスリングから転向するよう説得もされたというエピソードも確かに実況で紹介されたが、両親を説得できたのは五輪がアテネから種目に採用されたから、というのが実況アナの言っていた正確な情報なのではないだろうか。