本来だったら貰える人とは

2012/5/31のフジテレビ『とくダネ!』。生活保護の不正受給の話題に関して、司会の小倉智昭さんが「本来だったら貰える人がガーッと頑張ってて、餓死しちゃう人もいるのに、不正する人が貰えてる」などと最後にコメント。
小倉さんに限らず「本当に困ってる人がもらえず、不正してもらってる人はおかしい」というコメントは、テレビコメンテーターの定番になっているのか、あらゆるワイドショーやニュースで聞く。「不正してもらっている人はおかしい」のは当然として、引き合いに出される「本当に困っている人」とは何なのか。
具体的に挙げるコメンテーターもいる。「北九州や北海道で生活保護もらえず餓死したような本当に困っている人」といった具合に。「本当に困っている人」=餓死した人。餓死した人しか本当に困っているとは言えない?生きているうちに「本当に困る」とは?不正受給の取材VTRばかりで、「本当に困っている人」「本来貰える人」がどんな人なのかテレビ画面には出てこない。
「本来だったら貰える人がガーッと頑張ってて」というコメントは、「本来だったら貰える人」がどうすることを期待しているんだろう。「貰える人は貰っとけ」と考えてるのか、それとも「貰わずにガーッと頑張ってる人のように頑張れ、という不正受給者への見本として貰わないままで」という意味合いなのか。
間ととって「ガーッと頑張ってる人しか生活保護は貰うな」というのが多分正解なんだろう。生活保護貰うならガーッと頑張らなければならない。「ガーッと頑張る」とはどういうことか?「無気力に生きている」は違う。「遊びに頑張る」は違う。「趣味に頑張る」は違う。「芸能、芸術など趣味みたいな仕事に頑張る」多分違う。「仕事に頑張る」正解。
自立できるだけお金を稼げる仕事につけるなら生活保護は受けていない。生活できないような稼ぎの仕事にしかつけないから生活保護につく。そのような仕事にガーッと頑張ることができるだろうか。ガーッと頑張るためには心と体の休息が必要だ。酒・タバコ・遊びは頑張るために許されるだろうか。
メディアで発信される「本当に困っている人」の顔が全然見えてこない。どんな人でも生活保護をもらってれば否定的にしか捉えられないだろう。北九州や北海道で餓死した人たちも、生活保護をもらっていたら同じように叩かれたんじゃないか。
『とくダネ!』では不正受給総額が130億円と紹介した際、ナレーションで「これは氷山の一角だ」と断定していた。他の番組では普通「氷山の一角なんじゃないですか」と推論を言うにとどまる。断定する根拠も提示されないし、本当に「氷山の一角」としたら生活保護受給者の大半が隠れ不正受給者ということになる。また生活保護騒動の報道では、たいてい最初に日本の生活保護費が3兆円で年々増額しているという話題を「これは大問題だろう」というニュアンスで差し挟む。
メディアは一連の生活保護報道でどうしたいのか。生活保護総額をただ減らしたいだけなのか。不正受給がなくなればいいのか。「本当に困っている人」を助けたいのか。全部だって?終わり。