ズッコケ中年三人組age47を読む

面白かった。今作はage46につづいて三人組の重要な人生の転換点が描かれている。47を読む前に46は必ず讀んでおいた方がいい。


47ではハチベエが市議選に立候補する。小学生時代からハチベエを知っている読者としては、ハチベエの当選を祈らずにはいられない。しかしハチベエが掲げる政策は、「新たな地下鉄建設を」というもので、全く知らない状態で投票権を持っていたなら自分は「地下鉄建設反対」の候補に投票していたところだ。


作中でも市長は「地下鉄反対派」で議会と対立しているという。改革者として人気のある首長と、支援者の利益を代弁する市議の対立。どこの地方議会でも最近よく見かける構図だ。今回ハチベエを市長派ではなく、旧勢力とみられる側から立候補させたのが上手いと思った。読者として市民としていろいろ考えさせられる。


ハチベエはいろいろ政策を打ち出してはいるが、結局は日頃の人柄の良さで同級生たちから応援をしてもらう。政策より人柄。信頼できる人を応援するのだ。


前作では暗い話ばかりだったので今回は三人組にとって明るい話にした、と作者の那須正幹せんせいはあとがきに書いていた。確かに三人全員にハッピーエンドが用意されていたけど、その全てに一抹の不安が残る。


ハチベエは市議になっても、そのままやっていけるか不安。演説で「実行力」を連呼してても、ハチベエにそれだけの政治力が身につくのか。早々と会派を脱会して議員辞職をしそう。


ハカセの子供はまだ障害の有無が明らかじゃない。自由すぎる陽子に子育てが務まるのか。子育てを放棄したとき、ハカセは妻をほんとうに許せるのか。


モーちゃんのうちは、老母のボケがまだギリギリのラインをさまよってそうで、いつまたボケが再発するかハラハラする。


今作でどんな「ズッコケ」が最後に待ち受けるのかハラハラしながら最後まで讀んでしまった。結局そういう「ズッコケ」展開はなかったが、それでも三人組の将来には苦労が絶えなさそうでものすごく心配。