めざましテレビで後藤氏妻のメッセージの裏にISISからの脅迫があったことを伝えていなかった

2015年1月30日放送のフジテレビ『めざましテレビ』で、7時台のトップニュースはイスラム国の邦人誘拐事件で人質となっている後藤健二氏の妻がメディアに初めて胸の内を明かしたというものだったのだが、その裏にイスラム国からの脅迫があったことを伝えていない、何ともダメな報道の仕方だった。


後藤氏の妻が報道機関に出したメッセージとは、「ISISから新たなメールがきた。報道機関を通じて世界に後藤の助命を嘆願するメッセージを出して日本、ヨルダン政府に圧力をかけろ、さもなくば後藤の命はない、というものだ。両政府には感謝しているが、後藤とパイロットの命は政府が握っていることを知ってほしい」みたいな内容なのだが、「めざましテレビ」の7時台のニュースでは、「後藤とパイロットの命は政府が握っていることを知ってほしい」という内容だけを抜粋して伝え、肝心の「ISISから、報道機関を通じて世界に後藤の助命を嘆願するメッセージを出して日本、ヨルダン政府に圧力をかけろ、さもなくば後藤の命はない、というメールがきた」という脅迫があったことは伝えていなかった。


脅迫によって出されたメッセージなのに、めざましテレビではその部分を外して「初めて胸の内を明かした」と、それが心からの思いであるかのように、視聴者に感動を訴える型に嵌めた映像の作りになっていたのが気になった。


その点では、ハフィントン・ポストも全文を掲載していながらも、その記事の見出しの付け方に「脅迫」の文字がないのが気になるのだった。自発的に手記を公表したかのような見出しなのだ。

後藤健二さんの妻が手記を公表「これは健二の最後のチャンスです」(全文)
http://www.huffingtonpost.jp/2015/01/29/rinko-message_n_6570652.html

これまでの20時間で、誘拐犯は私に最新の、そして最後の要求と見られる文章を送ってきました。


「リンコ、おまえはこのメッセージを世界のメディアに対して公開し、表に出さなければならない。でなければ、健二が次に殺されるだろう。29日の日没までにサジダ(・リシャウィ死刑囚)がトルコ国境付近にいなければ、ヨルダン人パイロットも即座に殺害する」


私は恐れています。これは健二の最後のチャンスです。健二の解放と、ヨルダン人パイロットの命を救うには、あと数時間しかありません。私はヨルダン政府と日本政府に、二人の運命が委ねられていることを理解して欲しいのです。


では、どう報じればよかったのかというと、NHKが参考になるだろう。

後藤さんの妻「イスラム国」に要求されメッセージ NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150130/k10015076181000.html

このような見出しにすれば、ISISに脅迫された行動と明白になっていると同時に、その中で後藤氏の妻がほうぼうに気を使いながら自分の思いを述べていることが分かる。



また、イスラム国は後藤氏の妻の他に、ヨルダン人パイロットの家族にも同じような脅迫を送っていたらしく、こちらもニュースになっている。

操縦士の親族脅迫 地元英字紙が報道
【アンマン(共同)】 過激派「イスラム国」を名乗るグループが、サジダ・リシャウィ死刑囚の釈放要求にヨルダン政府が応じなければ、ヨルダン軍のパイロット、カサスベ中尉と後藤健二さん(47)の2人を殺害するとパイロットの親族を脅迫していたことがわかった。地元英字紙ヨルダン・タイムズ(電子版)が29日までに報じた。
 脅迫した時期は不明だが、犯行グループが当初の期限として設定した28日までの死刑囚釈放が実現しなかったため、ヨルダン政府に揺さぶりを掛けたとみられる。
 パイロットの親族が受け取った犯行グループの声明は「ヨルダン政府に圧力をかけろ。さもなければパイロットと日本の捕虜の遺体を見ることになる」と表明していた。
静岡新聞 平成27年1月30日(金曜日)朝刊)

ヨルダン人パイロットの家族は解放を求めてヨルダン政府にデモをしているという報道が日本にも伝わっているが、その裏でISISからの直接の脅迫があることも忘れてはならない。