ゴッドハンドと森口氏の医学論文騒動の違い

iPS細胞の人体への移植手術に成功したという報道が虚偽だったというニュース。読売新聞が最初に大きく事実として載せ、共同通信が後追いで全国配信、テレビが順に報道したものだから、それが実は誤報だったことですごい騒ぎになった。


で、虚偽のiPS細胞移植成功の論文を書いた森口尚史さんが過去に発表した論文の数々も虚偽ではないか、という疑惑も深まって、今検証が進められている。現在の報道を見る限り全部ウソっぽい。


森口さんの騒動への感想で、「考古学のゴッドハンド事件を思い出す」というものをよく見かけた。自分もそう。でもよく考えれば考古学会をガタガタにしたあの旧石器捏造事件と今回の森口さんの事件には違いがある。


・ゴッドハンド:捏造した石器や遺跡を一流の学者たちが信じていた。
・iPS細胞移植森口:捏造した論文を一流の学者たちは信じていなかった。というか気にも止められていなかった。


・ゴッドハンド:学者たちによって捏造された旧石器時代の遺跡が一般人に広められた。
・iPS細胞移植森口:マスコミによって捏造された論文が一般に広められた。


・ゴッドハンド:毎日新聞のスクープで捏造が明らかになった。
・iPS細胞移植森口;読売新聞の誤報で捏造が明らかになった。


学者の間で持ち上げられていたゴッドハンドと比べ、森口さんはマスコミに持ち上げられていただけだった。森口さんの学者としての実績は、マスコミに自分から売り込んで作り上げたものだった。ゴッドハンドの旧石器捏造問題は考古学全体に多大な影響を与えたが、森口さんの論文捏造は同じ専門の研究者に何ら影響も打撃も与えない。痛手を追ったのはマスコミと共著者として名義貸しした学者くらい。