教科書検定でのアイヌ民族記述修正の留意点

アイヌ否定論者の播いた種が教科書検定で実を結んだ? - Danas je lep dan.
http://d.hatena.ne.jp/Mukke/20150407/1428392310


今回の教科書検定での突然の大幅な修正要請。歴史記述に時の政府の見解を入れなければならなくなった。アイヌ政策に関する記述で、北海道旧土人保護法について、「アイヌ民族から土地を取り上げて」が「アイヌ民族に土地を与えて」に修正された。旧土人保護法は土地を与える法律であるためであるからだが、旧来土地を所有するという概念を持たなかった集団から生活の地を奪った点についてのニュアンスは教科書から消えた。
この点、歴史の汚点を汚点として伝えなくていいのか、とか今回の教科書検定に影響を与えた現政権に怒るところであるが、あるけれども、その前に留意しなければならないことがある。


アイヌ民族の北海道旧土人保護法について記述が修正されたのは1社だけである。
つまり元々、「アイヌ民族から土地を取り上げた」と記述していた出版社は一社のみしかなく、他の数社が出版する教科書では、同法について「土地を取り上げた」要素があったことは記述されていなかったことになる。別のところで「アイヌ民族から生活の地を奪った」という要素を記述している可能性はあるが。中学の歴史教科書のトップシェアは東京書籍で、今回修正された文教出版は2位以下である。今回の記述の修正は、大半の学校には影響はないことになる。結局、今回の教科書検定で採択された歴史教科書を全て読み比べた後、改めてアイヌ民族に関する記述内容の是非を問わなければならない。