NHKの吹き替えの悪意

NHKで15日放送された終戦番組「渡辺謙 アメリカを行く "9.11テロ"に立ち向かった日系人」の演出が気になった。
太平洋戦争中、アメリカで起きた日系人排斥と強制収容を取り上げて、差別問題と戦争の悲惨さにクローズアップしていくというもの。番組内で「当時のロサンゼルス・タイムズ紙には日系人の強制収容を肯定する記事が掲載された」という部分に挿入された台詞が違和感バリバリだった。
その強制収容を肯定した記事を日本語に訳して、筆者(名前出ていたけど失念)役の声優に読み上げさせたのだが、日本語訳も声優の演技も制作側の悪意丸出しだった。
記事を書いた記者の顔写真を出して「私は日本人が嫌いだ。日系人が嫌いだ。やつらにうめき声をあげさせるのだ…。やつらの感情を傷つけることをおそれず…」という吹き替え台詞がアニメの悪役のように読み上げられていた。
そのあと「新聞まで感情的に差別していた」みたいなナレーションが入るのだが、どっちが「感情的」なんだよっ、とツッコミ入れたくなった。
元の記事を読まないと分からないが、どういう単語を『やつら』と訳したのだろうか。普通に『彼ら』と訳しておけばよかったのではないか。日本の新聞記事に『やつら』という言葉が並ぶことはまず無いだろう。だったらアメリカの新聞記事を訳すときも『やつら』という単語は使うべきではない。
吹き替えの際も、わざわざ感情込めて憎々しげに語らせる必要はない。ドキュメンタリーだろう?印象操作をさせようと声優に演技を指示することはやめてほしい。書かれている内容をそのまま流せばいいだけだ。
つい最近、翻訳語問題が話題となったが、
Togetter - 「「翻訳された女」は、なぜ、「〜だわ、〜のよ」語尾で喋っているのか。」
http://togetter.com/li/167524

傲慢で差別的な白人を示すのに、傲慢で差別的な台詞を作ったり、傲慢で差別的な演技をさせる必要はない。