西村眞悟の問題発言は「日本には韓国人の売春婦が大勢いるという趣旨の発言」ではなく、「大阪の韓国人に『お前慰安婦』と言え」という方

 日本維新の会の会合で、同党議員の西村眞悟従軍慰安婦問題について問題発言をして、離党だとか除名だとかの話になっている問題。昨日(17日)から今日にかけて、この、ただの一議員の発言がマスコミで大きく報じられた。以下、この問題を論じるというか、各報道内容で何が問題視されたかをメモする意図で追ってみたい。
 まずNHKでは「西村眞悟衆院議員 離党届を提出」(参照)と「維新 西村議員を除名処分で調整へ」(参照)の2回に分けて報じているが、西村眞悟議員が述べた内容は、「「日本には韓国人の売春婦が大勢いる」という趣旨の内容」とし、実際にはどのような発言であったかがボカされている。

日本維新の会西村眞悟衆議院議員は、橋下共同代表のいわゆる従軍慰安婦の問題などを巡る発言に関連して、「日本には韓国人の売春婦が大勢いる」という趣旨の内容を述べ、その後、発言が不穏当だったとして撤回したうえで、離党届を提出しました。


 共同では、「維新、西村衆院議員を除名へ 「売春婦」発言、辞職要求」(参照)で、氏の発言内容が報じられ、「「日本には韓国人の売春婦がうようよいる」とした自身の発言」が問題であったとしている。

日本維新の会西村真悟衆院議員は17日午後、従軍慰安婦をめぐり「日本には韓国人の売春婦がうようよいる」とした自身の発言に問題があったとして、離党届と会派離脱届を提出した。


 産経では、「維新・西村氏が離党届 「韓国人売春婦うようよ」発言で」(参照)である。見出しから「うようよ」という言葉を使っているのが特徴。記事では、「「日本には韓国人の売春婦がうようよいる」との発言」が問題になったと伝えている。

日本維新の会西村真悟衆院議員は17日午後、党代議士会での「日本には韓国人の売春婦がうようよいる」との発言が不穏当だったとして、離党届と会派離脱届を松野頼久国会議員団幹事長に提出した。


 朝日系列では、テレビ朝日のANNニュースが「橋下氏擁護したら…維新の西村議員が“失言”除籍へ」(参照)で、「「韓国人女性は売春行為をしている」などと発言」としているのに対し、朝日新聞では、「西村衆院議員、党を除名へ 「韓国人売春婦」発言で」(参照)と報じ、見出しでこそ、「「韓国人売春婦」発言」と意味の分からない略し方になっているが、記事内容では、「「韓国人の売春婦はまだうようよいる。大阪で『お前、韓国人慰安婦だ』と言ってやったらいい」と発言」と、より詳細を伝える具体的な内容になっている。

日本維新の会では、西村真悟衆院議員が17日の党代議士会で「韓国人の売春婦はまだうようよいる。大阪で『お前、韓国人慰安婦だ』と言ってやったらいい」と発言。西村氏は直後に記者会見して発言を撤回し、「党に迷惑をかけた」として離党届を提出した。


 読売では、「維新・西村議員除名へ、慰安婦問題で不適切発言」(参照)で、比較的長い記事を書き、「「売春婦はまだ日本にうようよいる。韓国人。大阪の繁華街で『お前韓国人、慰安婦』と言ってやったらよろしい。戦いましょう」などと発言」と、不適切だった箇所も省略しないで伝えている。

日本維新の会西村真悟衆院議員(比例近畿)は17日、国会内で開かれた同党の代議士会で「売春婦はまだ日本にうようよいる。韓国人。大阪の繁華街で『お前韓国人、慰安婦』と言ってやったらよろしい。戦いましょう」などと発言した。


 時事通信では、「「大阪の韓国人に慰安婦と言え」=維新・西村氏が発言、直後に撤回」という見出しだ。記事では、「「売春婦はまだうようよいるぞ。大阪の繁華街で韓国人に『慰安婦』と言ったらいい」と述べた」と伝えている。

日本維新の会西村真悟衆院議員は17日、党代議士会で、旧日本軍の従軍慰安婦をめぐる橋下徹共同代表(大阪市長)の発言に関連し、「売春婦はまだうようよいるぞ。大阪の繁華街で韓国人に『慰安婦』と言ったらいい」と述べた。その場で幹部らから撤回を求められ、西村氏は「撤回します」と語った。


 以上、比較としてこれらの報道ソースを引用したが、報道によって西村氏の発言でどこに主要な問題があったかが、微妙に違うことも読み取れる。西村議員の発言を具体的に報じたのが朝日、読売、時事。対して省略して報じたのがNHK、共同、産経。NHKが氏の発言を「「日本には韓国人の売春婦が大勢いる」という趣旨」と報じたのを筆頭に、多くのメディアが「売春婦はまだ日本にうようよいる。韓国人。」という方を中心的な問題発言として取り上げる中、時事通信のみが、発言後段の「大阪の繁華街で韓国人に『慰安婦』と言ったらいい」に注目し、見出しにも使用している。
 ではオリジナルはどのようなものであったか。その前に時事通信では「西村議員の発言要旨」(参照)として、維新の会の会合で氏が具体的に何を話していたかが掲載されている。

 日本維新の会西村真悟衆院議員の党代議士会での発言要旨は次の通り。
 外電(外国メディア)では橋下(徹共同代表)さんの報道が捏造(ねつぞう)され始めている。慰安婦がセックススレイブ(性奴隷)と転換されている。これが国際的に広がれば反日暴動、謀略が成功しかねない。
 われわれは積極的に「売春婦とセックススレイブは違うんだ。売春婦は日本にまだうようよいるぞ、韓国人」(と主張し)、反撃に転じた方がいいと思う。大阪の繁華街で「お前、韓国人。慰安婦やろ」と言ってやったらいい。戦いましょう。
 (党幹部から撤回を求められ)韓国人(と言ったの)は撤回します。


 同記事では「要旨」と書いてあるため、この記事に書かれていることが西村議員が話したことの全文であるかは読み取れない。具体的にどのような主旨で話されたかは、実際に聞いてみて発言のニュアンスまで読み取らねばならない。どのテレビ局も差別の連鎖を恐れて発言映像の公開を自粛する中、TBSだけは使命感をもって氏の発言映像を報道していた。それが、「維新・西村氏が“侮辱”発言、「売春婦がウヨウヨ」」(参照)だ。現在映像は削除されているが、ニコニコ動画に転載アップロードされているものを発見したので掲載したい。


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 上記映像での発言のやり取りはTBSの「維新・西村氏が“侮辱”発言、「売春婦がウヨウヨ」」(参照)から転載してみよう。

 17日、国会内で行われた「日本維新の会」の代議士会。自ら発言の機会を求めた西村真悟衆院議員は、橋下共同代表の一連の発言を擁護しようと、こう述べました。
 「(外国では)『慰安婦』が『セックス・スレイブ(性奴隷)』と転換(訳)されている。我々は積極的に『売春婦』と『セックス・スレイブ(性奴隷)』は違うと、売春婦はまだ日本にウヨウヨおるぞと、韓国人。私、きょう(17日)大阪に帰りますが、大阪の繁華街で『お前、韓国人、慰安婦やろ』と言ってやったらよろしい」(日本維新の会 西村真悟衆院議員)

 「今の(発言)は撤回してください。今の『韓国人』というのは撤回してください」(日本維新の会 松浪健太衆院議員)

 「『韓国人』は撤回します。『慰安婦』であります」(日本維新の会 西村真悟衆院議員)


 西村議員の最初の内容は、保守系議員がかねがね主張してきた問題点である。維新の会共同代表の橋下徹市長も一連の従軍慰安婦発言問題で同じ事を主張していた。この点、国内報道であってもなかなか発言自体を問題視にできることではない。
 問題発言とされた箇所はどうか。「売春婦はまだ日本にウヨウヨおるぞと、韓国人」という発言と、「大阪の繁華街で『お前、韓国人、慰安婦やろ』と言ってやったらよろしい」という発言だ。前者は外国での慰安婦報道の話題につづけて真面目な口調で、日本にいる韓国人風俗嬢について語っている。後者は冗談めかして笑顔で「韓国人に『慰安婦』と言ってやろうぜ」と述べている。単純に問題発言というなら、後者のほうがよほど差別的で酷いヘイト感情を含んだものだ。しかも、後者のスピーチをしているときに、後方の中山成彬議員が一緒になって笑っているのも議員の見識に問題があると疑われる。
 では何故、報道では前者に重点を置いて伝えられているのか。その理由は、毎日放送の「橋下発言 擁護のはずが 維新の西村眞悟議員が“暴論”」(参照)で分かる。

 西村眞悟議員は「外国の報道で慰安婦が、性奴隷と捏造されている」と主張、その後に続いたこの暴言が身内の国会議員から問題視され、直後に釈明会見を開きました。

 「(代議士会での)私の発言は不穏当であったので、取り消しさせていただきます」(日本維新の会 西村眞悟衆院議員)
 (Q.どの部分が?)
 「韓国人慰安婦がうやうやおるという部分は、計数を図ったことがないので、国名をあげたことも不穏当であった」


 ようは、西村議員が釈明会見で「韓国人慰安婦がうやうや」部分が問題だったと述べたから、「「日本には韓国人の売春婦が大勢いる」という趣旨」が問題だったと、各メディアはそのまま伝えたというわけだ。時事通信が何故、後段部分を見出しにして報じられたかといえば、氏が釈明会見を開く前だったから、ということに他ならない。
 後者を大きく報じると、在特会などが真似して社会問題化を誘発することを懸念して、後段の発言を伝えるのは抑え目にした、ということも考えられるが、マスメディアがそこまで考えてるとは思えない。


 今回の件で一番株を上げたのは、西村眞悟議員のヘイトスピーチ直後に即座に発言撤回を求めた松浪健太議員だ。松浪議員があそこですぐに撤回を求めなければ、氏の発言はスルーされたまま会合は終了し、維新の会にとって更なるダメージとなったことだろう。撤回を求めるに辺り後方で笑っていた、旧たちあがれ日本平沼赳夫議員、園田博之議員、中山成彬議員は、西村眞悟議員と同じく維新の会にとってお荷物でしかないだろう。



似たようなこと前にも書いてた。

メディアは「知恵を出さないやつは助けない」を暴言の代表例に使うな - rabbitbeatの日記
http://d.hatena.ne.jp/rabbitbeat/20110705/1309878208