2016年に年が明けて国会が始まり、そこでは昨年末に日韓政府間で合意された慰安婦問題についての質疑も行われた。与党議員からの質問に安倍首相は「「1965年の日韓請求権協定により、法的には完全かつ最終的に解決済みだとの立場には今回の合意でも何ら変更はない」と答えた。
それを共同通信では
日韓合意に合わせて岸田文雄外相が表明した「日本の責任」に関し、法的な責任は含まれないと強調した形だ。
と伝え、我が地方紙の見出しには「合意に法的責任含まず」と載った。共同のWebではこうだ。「首相、慰安婦問題の法的責任否定 - 共同通信 47NEWS
http://this.kiji.is/57752872057914877?c=39546741839462401」
共同通信のこの憶測文と見出しは変だ。慰安婦問題における『法的責任』とは何かが意味不明になっている。あるいはわざと曖昧にしているのか。
慰安婦問題の論点における『法的責任』とは、戦前・戦中の日本軍の慰安婦利用は当時の国内法・国際法上において罰せられたり批判されたりするものだったのかどうか、という話ではなかったか。
この点について、愛国保守・極右を中心に、・当時としては法的に問題はなかった。・軍が強制連行したということはなく国が問われる違法性はない。 などと強硬に反論している。
一方で、日本政府の立場としては、『法的責任』をぼかした上で、日本軍の慰安婦利用の問題を認めている。政府見解で『法的責任』を否定したことなんてあるのだろうか。
日本政府が一貫して『法的』に否定し続けているのは賠償問題の話である。慰安婦問題の責任を認めたとしても、1965年の日韓請求権協定で『法的』には賠償問題は解決済みであって、今さら終戦前のことを国家賠償することはできないというのが、日本政府の立場だ。安倍首相の答弁もこれを繰り返したにすぎない。(一方の韓国政府の立場は、日韓請求権協定には、両国間に問題が起きた時に協定の修正協議ができるとも書いてあるというものだ。)
それを共同通信では「岸田文雄外相が表明した『日本の責任』に関し、法的な責任は含まれないと強調した」と混同して書いている。「今回の合意での支払い金は法に基づく賠償じゃないよ。道義的支援だよ」ってだけの話だ。法的責任があろうと人道的責任があろうと法的には国家賠償はすることはできないので支援金を送るということだ。それは『法的責任』がどーたらこーたらということと関係はない。