テレビコメンテーターのポリティカル・コレクトネス

古市憲寿氏の住んでいるマンション : ARTIFACT ―人工事実―
http://artifact-jp.com/2016/01/06/furuichi-mansion/

社会学者としてメディア露出が激しいこの方の会社役員としての一面は初めて知ったが別に隠していたわけではないらしい。

“雇われない生き方”を阻む壁とは?―古市憲寿氏インタビュー(1) - 新刊JPニュース
http://www.sinkan.jp/news/index_3411.html
―冒頭に古市さんが執行役として経営に携わっている(そして本のタイトルにも使われている)有限会社ゼントについて触れられています。ゼントとはどんな会社なのですか?

「本の書き出しがこんな風にはじまります。「上場はしない。社員は三人から増やさない。社員全員が同じマンションの別の部屋に住む。お互いがそれぞれの家の鍵を持ち合っている。誰かが死んだ時点で会社は解散する」。あんまり意味がわからないですよね。詳しくは本を読んでいただけるとうれしいです」

―古市さんはどうしてゼントにコミットされているのですか? また、ゼントを通して学んだことはありますか?

「気づいたら、いつの間にか…。今でも何をしているかは自分でもよくわかりません。ただ、「会社」や「役職」というのはただの箱や肩書きにすぎなくて、そんなものに縛られているのは窮屈だなあということには気づきました」

このマンションというのが冒頭の家賃33万円という物件ということだ。役員ではあるけれども実質は3人しかいない社員の1人。何やってる会社かさっぱり分からないが学生時代に携帯アプリで稼いだ人を中心としていて、金回りはいい企業らしい。

ITバブルで大反響「新・富裕層」の研究番外編 「私はこうやって莫大な資産を手に入れた」「新しい金持ち」と「名門の金持ち」がその仕事と生き方を語った!  | 賢者の知恵 | 現代ビジネス [講談社]
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33347
 ゼントの社員は、松島氏を含めてわずか3人。全員が同じマンションに居住し、互いの部屋の鍵を持っている。彼らのことを松島氏は「ファミリー」と呼び、ともに仕事をする取引先を「仲間」と呼ぶ。通常の会社経営者なら当然持っている、会社を大きくするとか、利潤拡大が第一といった発想はない。

「『仕事って僕らの生き方そのもの』という考え方から出発しているので、仕事だから働くとか、オン・オフを分けるとかいった発想がないんです。一日の中で、仕事の時間は特に決まっていません。映画を観ていても、途中で何か閃いたらそれは仕事で、オンとオフが完全にミックスしてしまっている」

 業務内容は説明が難しい。松島氏自身、「答えに詰まる」と笑う。

東京ガールズコレクション(日本最大級のファッションイベント)とかの大きな団体や大企業との付き合いもあるので、説明する際には相手に合わせてゼントが手掛けている業務の一面を切り取って説明しています。投資家としての一面もあれば、事業のコンサルティングをするという一面もあります。ITもやります。アプリケーションも作るし、大手不動産会社など企業のインフラを作ったりもします。だいたい何でも仕事になるんです(笑)」

ファミリーのうちの1人が古市氏ということだが、こうやって仲間が合鍵持つような関係じゃ、そりゃ女性についての浮いた話をテレビで全然話せないわけだ、と思った次第。結婚とは程遠い生活だ。会社が潰れなきゃ女性と同棲できない。
思い出すのは、炎上した「ハーフは劣化が早い」発言が出たフジテレビのワイドナショーで準レギュラーとして出演中の古市氏が、芸人からの恋愛トークのフリに非常に動揺し、うまく答えることができてなかった場面。「彼女いるんですか?」というこの手の軽い番組でありがちな質問にもうろたえた様子を見せながら「…彼女って必要なんですかね?」と早口で童貞っぷり全開で(実際に童貞かどうかは関係なく)話題をそらしていた。その他のニュースでは正論だったり極論ぶつけたりズバッと本音コメントを話す古市氏だが、こと女性の話に限っては「ネットの非モテ強がりキャラ」そのままのように成りきって話す。
これは「ハーフ劣化」発言と同じ回のものだが、古市氏はAKBの指原莉乃メンバーとこんなやりとりをしてアイドル論を語っている。

(指原)こういう場でグループのこと話すのもちょっと恥ずかしいんですけど私たちはアイドルなりにファンを増やそうとしていろんなことにチャレンジしてみたり考えたりもしてるからアイドルは考えてる子が多いかなって。
(古市)どうしたらアイドルみたいにモンスターみたいになれるんですかね。
(指原)モンスター?
(古市)だってモンスターでしょ。
(指原)どういうことですか?
(古市)だってファンからいろんなものを搾取してどんどん自分たちの存在を大きく大きくさせていくってモンスターそのものですよね?食べてどんどん大きく…。
(古市)そうそうそう。
(指原)あっ…。私もモンスターということですか?
(古市)うんモンスターですよね。

こういう古市氏の番組でのキャラはしっかり番組内でツッコまれている。若者の消費離れは少子化が原因と強い口調で話す古市氏に対し、恋愛感、結婚観を問う東野氏。

古市憲寿「若者の消費離れは単なる少子化が主要因」(2016/01/01)
http://widenashow2015.jp/blog-entry-211.html
東野:でも、古市さんよくそれおっしゃいますけど。でも古市さんご自身がそんなに恋愛もしないし、「子ども欲しい」とか聞いたこともないのに、自分のこと棚に上げてようそれ言うなぁって…
ヒロミ:女性離れだしなー。
東野:ほんと思うんですよ。
古市:この前、週刊文春になんかあの…性欲ない人代表みたいな感じで勝手に似顔絵が描かれてて。なんなんだろなって思ったんです。
東野:そういうことですよ笑
指原:言ってるじゃないですか。
古市:まぁ…言ってますけど。でもそれとこれと別じゃないですか。
東野:ハハハハ笑
指原:それとこれと別?
松本:セックス離れなんでしょ?
古市:うーん…あんまり好きじゃないですけど。
東野:子ども欲しいという気持ちもあんまりない?
古市:あんまりわかんないです、子ども欲しいという気持ち。
東野:「あんまりわかんない」のがそれが僕すごい…少子化が問題や言うてるのに子ども欲しくない…


「ハーフは劣化が早い」も匿名ネットでよく言われる言説だが、これは「ハーフ=美男美女」と持ち上げる風潮が前提でないと通用しない。おそらくハーフタレントが芸能界で増えてるというような流れで出た言葉だろうと思っていたが、そうではなかった。
指原莉乃が、ダレノガレ明美の幼い妹が「天使すぎる」ほどかわいい、「ちっちゃい子で外国の子ってちょっとはやりつつある」から、2016年はこの子がブレイクすると発言。同じハーフタレントのウエンツ瑛士に矛先が向き、「ウエンツさんも小さい頃はめちゃくちゃ可愛かった」と話が盛り上がり、指原がダレノガレの妹さんも「可愛さでは一番いいタイミング」と発言。そこに古市憲寿が「一番いいタイミング(笑)」と反応し「一般論としてハーフって劣化が早い」と論をぶった。ウエンツが反論するも最後は「あっ確かに」とオチをつけた。
番組出演者が「政治的正しさ」として反論していたのは「劣化」という言葉の使い方で、「ハーフの老け方へのディス」に関してではなかった。「その「劣化」って言葉も嫌いでしょ?安藤さん。」「「劣化」って駄目っていう話。」「物に対する言葉な感じしますよね。」と指摘され、古市氏は「劣化」を「老け方」という言葉に言い直して話を続けてウエンツ落ちまで持ってった。
容姿に対して「劣化」というのはやはり匿名ネットだけで使用されるスラングにとどまるべきで、テレビで使用するのは正しくない。お笑い番組で出るならともかく曲がりなりにも情報番組で出るコメントではない。芸人が言うならともかく文化人タレントが話す言葉ではない。何かいろいろ発言の機会を間違えている。
こういう言葉の使い方をテレビが始めると、じゃあ俺も、じゃあ私もと後に続く人が出て、結局一般化する。正月番組で言語収集していた三省堂辞書編纂者の人なんかは決して辞書に載せようと思わないでほしい。


そういえば、この「ハーフ」という言葉に関して、日本テレビの「笑ってこらえて」だけが「ダブル」という言葉に置き換えて使用しているが、スタッフのどういうこだわりがあったのか、どこかで明らかにしてほしい。「ハーフ」が「差別的」という論があるのは知っているが「ダブル」にも異論は出ているみたいだ。しかし最近は「ダブル」のコーナーを聞かなくなったので、この挑戦は尻すぼみしたのかもしれない。