朝日新聞が「無断引用」で提訴されたというEM菌関連の話題

「取材なく無断でコメント掲載された」琉球大名誉教授が朝日新聞を提訴 東京地裁(1/2ページ) - 産経ニュース
http://www.sankei.com/affairs/news/150703/afr1507030002-n1.html
 微生物が水質浄化に与える効果を疑問視する朝日新聞の記事で、取材を受けていないにも関わらずブログの文言を無断で改変して使われ、コメントしたかのように掲載されたとして、琉球大学名誉教授の比嘉照夫氏(73)が2日、同社を相手取り、慰謝料など約350万円と謝罪広告を求める訴訟を東京地裁に起こした


無断で改変して掲載されたという朝日新聞の記事の文章はこれ

朝日新聞デジタル:EM菌「効果疑問」検証せぬまま授業-マイタウン青森
http://web.archive.org/web/20120703141844/http://mytown.asahi.com/aomori/news.php?k_id=02000001207030003
EM菌の効果について、開発者の比嘉照夫・琉球大名誉教授は「重力波と想定される波動によるもの」と主張する。製造元で普及を進めるEM研究機構(沖縄県)は「EMに含まれる微生物がリーダー的な存在となり、現場の微生物を連係させる」と環境浄化メカニズムを説明する。また、機構は「放射能対策に効果がある」とも言う。


比嘉照夫氏が改変されたという元の「ブログ」と、該当する文章はこれ

EM情報室 WEBマガジン エコ・ピュア 連載 新・夢に生きる ⑤  比嘉照夫 名桜大学教授
http://www.ecopure.info/rensai/teruohiga/yumeniikiru05.html
昨年の12月、江本勝さんが設立した(株)IHMの20周年記念セミナーに船井幸雄さんと私がゲストスピーカーとして招待され、波動についていろいろとお話しする機会がありました。私はEMの本質的な効果は、関英男先生が確認した重力波と想定される縦波の波動によるものと考えています。(略)


比較

  • EM菌の効果について、開発者の比嘉照夫・琉球大名誉教授は「重力波と想定される波動によるもの」と主張する
  • 私はEMの本質的な効果は、関英男先生が確認した重力波と想定される縦波の波動によるものと考えています


いくつかのウォッチャー記事では、朝日新聞の記事が掲載された直後にEM研究機構がサイトで発表した見解や、EM菌に好意的で比嘉照夫氏に近しい人物の朝日記事批判の文章を元に、訴訟の争点とされる「改変された」と怒っている箇所を予想して指摘している。

やや日刊カルト新聞: EM菌提唱者が朝日新聞を提訴=批判報道への報復か
http://dailycult.blogspot.jp/2015/07/em.html
朝日新聞の記事が掲載された直後にEM研究機構が発表した声明文では、朝日新聞が上記の比嘉氏コメントを記事で引用したことについて、〈比嘉照夫教授のコメントがあるにもかかわらず、ご本人への取材は一切行われていないことがわかりました〉(声明文より)と主張。

[DNDメルマガ]vol.468 朝日新聞が比嘉照夫氏の談話をWebから無断引用の疑い
http://dndi.jp/mailmaga/mm/mm120725.html
記事を検証しよう。
7月3日付の記事には、
≪EM菌の効果について、開発者の比嘉照夫・琉球大学名誉教授は「重力波と想定される波動によるもの」と主張する。≫とあり、7月11日の記事にも≪開発者の比嘉照夫・琉球大学名誉教授は、効果は、「重力波と想定される波動による」と説明する。効果が確認されていない例が多く、理論も現代科学と相いれないとして、「非科学的」との批判がある。≫と問題にする。

そもそもこの「重力波と想定される波動によるもの」は、どこからの引用なのか。調べると、長崎大学の長島准教授が大学の講義「情報社会と科学〜波動〜」で使っていたことが判明した。「EM」を批判的に取り上げた箇所に、比嘉先生の講演の一部が引用されているのだ。

そのくだりを見てみると、2007年12月に、「波動」に関した記念セミナーに呼ばれて講演した比嘉先生のスピーチの一部だった。そこには「関英雄先生が確認した重力波と想定される縦波の波動によるもの」というセンテンスがある。このスピーチは、「WEBエコピュア」の「新・夢に生きる」に転載されているのだが、長野記者は、そこから一部を切り取って比嘉先生の談話として使ったことが明らかになった。そして、長野記者は「関英雄先生が確認した…」の肝心なところを削っており、原文の改ざんも行われていた疑いが出てきた。

Webから無断引用し、原文を改ざんして比嘉先生の談話のようにみせかけるのは、いかがなものか。これはでっち上げというのか、歪曲というのか、いずれにしても大きな問題をはらんでいることは確かだ。

その引用の仕方も悪意に満ちていた。「重力波と想定される波動による」とは、それだけ抜き取ると、いかにも記事に言う、現代科学とは相いれない非科学的な独自理論という印象を与えるのに十分な仕掛けだ。

「個人のブログから無断で引用をして記事を作っている」産経新聞朝日新聞を批判 - 斗比主閲子の姑日記
http://topisyu.hatenablog.com/entry/between_quotation_and_reprint
比較してみて分かる通り、"関英男先生が確認した"という言葉が外れているのが改変だということでしょうね。

EM菌批判の朝日記事は掲載当初からEM菌関係者から猛烈な批判を受けていて直接朝日新聞社に抗議する様子も記事になっている。当時は、比嘉照夫氏のコメント部分のみならず、記事の広範囲にわたって抗議していた。その時からネットで話題になっていたのを思い出してきた。

朝日新聞社を訴えた琉球大学名誉教授について - Togetterまとめ
http://togetter.com/li/842243
この件はEM側の出口さんが反論していて、それに対して片瀬さんが更に反論、という経緯があります。

朝日新聞のEM菌批判記事のあの長文を批判検討した中で、唯一裁判を起こして勝てそうだと思った箇所が、比嘉照夫氏の講演書き起こしを「主張」として掲載した点だったということか。



もう一度比較

  • EM菌の効果について、開発者の比嘉照夫・琉球大名誉教授は「重力波と想定される波動によるもの」と主張する
  • 私はEMの本質的な効果は、関英男先生が確認した重力波と想定される縦波の波動によるものと考えています

上に挙げたように、いくつかのウォッチャー記事では「関英男先生が確認した」という箇所が外れていることを「改変」したとして訴えているのだと指摘しているが、果たしてそれだけだろうか。
元の比嘉照夫氏の「ブログ」というのは、一般にいうブログではない。比嘉氏のお友達が関わる「波動技術実践研究会発足記念フォーラム」でのスピーチ原稿を掲載しているのだ。波動研究の場での講演なのだから、自身の研究と関連付けて「と考えています」などと仮説を述べ「波動」に対するリップサービスも入れている。
思うに、その前提を伝えないまま新聞記事で「と主張する」と強い意味合いで報じられたから怒っているのではないかと考えるのだけど。
朝日記事は、比嘉照夫氏のスピーチ内容とEM研究機構のサイトでの説明が食い違ってることを表して、EM菌は根拠の無い適当なものだと暗に伝えている。EM研究機構には、事前に取材メールが来ていたようだが、取材意図を不信がって回答をためらっているうちに、記事が掲載されてしまったとのこと。その取材メールの質問文が掲載されているが、食い違いについての具体的質問はされていないようだ。おそらく比嘉照夫氏のほうにも似たような取材メールを朝日記者はぶつけているのだろうけど、この「重力波」スピーチに注目するならば、論文になってるのでもないのだし、やっぱり直接具体的に「過去に重力波がEM効果の理由だとおっしゃってましたが」と確認取材したほうが良かったんではと思う。


比嘉照夫氏はEM菌と波動や重力波との関連について講演だけでなく、あちこちで披露しているらしい。

産経新聞【「取材なく無断でコメント掲載された」琉球大名誉教授が朝日新聞を提訴】への反応 - Togetterまとめ
http://togetter.com/li/842484
EM菌について重力波ガー波動ガーという主張、あちこちでしてません?
?>dndi.jp/19-higa/higa_7…

甦れ!食と健康と地球環境 第78回 EMの波動作用
http://dndi.jp/19-higa/higa_78.php
 これまでEMの効果の本質的な現象として、1、抗酸化作用 2、非イオン化作用 3、有害なエネルギーを有用なエネルギーに転換する機能、すなわち、シントロピー(蘇生)の法則が現れるという旨の説明を行なってきた。

 EMの波動作用については「健康生活宣言18号、20号」「船井メディア2013、12月号」でも詳しく述べたが、その応用は無限大で、EMの万能性の根幹をなすものと考えている。今のところ、その存在は明らかであり、再現性もあり、省エネや電磁波対策、放射線対策など様々な分野で応用され、期待通りの成果を上げているが、仮説的には重力波であり、現実的には電気抵抗(磁気)がなく電子のみを賦与する超伝導的な波動である。

 本DND76回でEM技術による鳥獣被害対策も、その波動の応用の1例であるが、実行しない人には「何らかのおまじない」か「信じられない」または「非科学的」「宗教上の言葉にすぎない」として不都合な真実を否定するのがおちである

「あちこちで話している」というのなら、朝日記事の問題の文章は、比嘉氏があちこちで話していた内容をまとめたものの可能性もあり、特定の一つの「ブログ」の記述を引用したという話は怪しくなる。「無断で改変され引用された」というのは比嘉照夫氏やEM菌に好意的なメディアDMDメルマガが言っているだけ? この点、朝日記者と「この比嘉主張はこのサイトからの引用」というすり合わせはできているのだろうか。裁判の行方が気になる。



こちらは、朝日記事の文章は「引用」ではなく今までの主張の「要約」ではないか、というブログ記事。

比嘉さんはいつから「波動」を語っていたのか〜EMフェスタ講演録から〜(前編) - 杜の里から
http://blog.goo.ne.jp/osato512/e/5a697ed4cb53296ff3c1ac1c329eeeb5

比嘉氏は少なくとも2000年から「重力波」とEM菌との関連について語っていたという。「波動」との関連付けはさらに古い。該当箇所の何が不満で訴訟したのか分からない。一言一句今まで語ったことと同じでないといけないのか。裁判でどのような主張をするつもりなのか知りたい。