韓国JTBCと朝日新聞の調査報道メディアとしての違い

朴槿恵前大統領を弾劾に追い込んだチェスンシル・ゲート事件の発端となったのは、韓国のJTBCというテレビ局の調査報道だった。JTBCの記者は、以前から良くない噂のあったチェ・スンシル氏の事務所のゴミ置き場から合法的にチェ氏が使用していたタブレット端末を入手し、そこに保存されていたデータから朴前大統領による機密情報の民間漏洩の事実を明らかにした。
そして、今年になってからは、JTBCのニュース番組に、次期大統領候補である有力政治家・安熙正氏の元秘書の女性を実名・顔出しで生出演させ、安氏から同意なき性行為を受けたと告発をさせた。安氏は、行為を認め、全ての政治的地位を辞職した。刑事事件として扱われ起訴される可能性も高いという。
JTBCの調査報道は、保守・革新に関わらず、2人の政治家を潰すことになった。これは韓国司法と世論が政治事件に非常に厳しいというお国柄もあるが、重要なのはJTBCが最初に言い逃れできない証拠を突きつけていることだ。
一方で、朝日新聞。「総理のご意向」文書報道では、匿名の証言で信憑性を確かめただけであったため、当初は政府から「怪文書」と一蹴されてしまっていた。前川喜平前次官が表に立って証言してくれなかったら、未だに「朝日の捏造文書だった」ということにされていただろう。
そして「決裁文書書き換え」報道でも、同じように記事の内容はあやふやだった。朝日が報じた事実としては、朝日新聞が確認した「契約当時の決裁文書」と、昨年国会に資料提出された「決裁文書」の内容が異なっている、というものである。それを朝日は、関係者の証言でもって「書き換えられたのか」と疑惑として報じ、政府に説明を求めている。
何があやふやかといえば、朝日が確認した「契約当時の決裁文書」というものが一体どこから出てきたのか、全く書かれておらず、どういう性質のものなのか意味が分からないという点だ。
朝日新聞の場合、あくまで政府側の反応を待つ、という姿勢の記事になっている。JTBCのように一撃で葬り去るような報道ではない。政府が反応しなければ、また、朝日新聞に「契約当時の決裁文書」を見せた人物が名乗り出て証言しない限り、何も変わらないし動けない。