熊本地震ではSNSの活用によりこれまで以上に報道批判熱が高まっている。
NHKの情報番組『あさイチ』では、2016年4月19日の放送で、番組終了間際での視聴者からのメッセージを伝えるコーナーで、熊本地震でのテレビ局の行動を批判するFAXが有働由美子アナウンサーによって読み上げられた。
「あさイチ」熊本地震におけるマスコミの取材活動を批判するFAXを紹介 - ライブドアニュース
この視聴者は、熊本在住の友人から現地の模様を聞いたという。FAXには、「余震で崩れそうなお宅の前でテレビ局がずっと待機しているのだそうです。どこの局かは分かりませんが、ご当人にとってはすごく失礼なことではないでしょうか?」と、震災時におけるマスコミの対応を批判する言葉がつづられていた。
この批判は、朝日新聞もNHKを引用して記事にした。
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震災の報道をめぐっては、現地で取材していた関西テレビ(カンテレ=大阪市北区)の中継車が、ガソリンスタンドで給油待ちの車列に割り込んでいたとして謝罪した。また、18日放送のNHK「あさイチ」では、熊本県で倒壊した家屋の前で取材を行うテレビ局に対する視聴者からの批判の声が紹介された。
ただ、この批判の前文はこうだった。
有働⇒熊本県10代の方からです。
『私は熊本県に住んでいる女子高校生です。ネットが発達している現在でデマ情報がたくさん流れています。発信するなら確かな情報を流してほしいです。
震源が浅いので地鳴りがごーっと聞こえて夜も恐ろしくて眠れません。早く学校の友達にも会いたいです。
熊本市内の友人から聞きました。余震で崩れそうなお宅の前でテレビ局がずっと待機しているそうです。どこの局かは分かりませんがご当人にとってものすごく失礼なことではないでしょうか。』
・ネットにデマ情報が多い。発信するなら確かな情報を。
FAXは、こういう書き出しで始まるのに、テレビ局批判の文言では、自分の体験・現状を伝えるのではなく、『友人から聞きました』と又聞き情報となってしまっており、どうにも矛盾をはらんだ内容になっていた。それでもこの女子高生は素直なメッセージを送っただけなのだ。
問題なのは、このFAXをそのまま読み上げるNHKと番組の姿勢にある。「確かな情報」を求めるメッセージに対して、不確かな情報を読み上げることで答えてしまっている。このFAXを選ぶ際に、送信者に確認取材をしたのか。「熊本市内の友人」に取材はしたのか。どこのテレビ局か特定してこの件で回答をもらう努力はしたのか。
NHKと『あさイチ』としては、「自戒を込めて」という意味合いで何も考えずに取り上げたんだろうが、不確かな情報を不確かなまま垂れ流すのが、この女子高生がマスメディアに求めていたことなのだろうか。
『あさイチ』は東日本大震災の時、ネットのデマについて特集を組むなどしていたのだが。