「君の名は。」と東日本大震災の大川小の悲劇

アニメ映画『君の名は。』が東日本大震災をモチーフにしてると聞いても、いまいちピンとこなかった。災害ものといっても、新海誠によって美しく演出された彗星衝突と、現実の地震津波の映像に大きな差があるからかもしれない。別に監督は観客にバリバリに震災を意識させようとしたわけでもないだろうし、この件はこれでいい。
ただ、29日のTBS『報道特集』で放送された、石巻市の大川小で多くの児童が津波の犠牲となった悲劇と、その後、保護者と自治体との間で争われた裁判についての特集を見て、ああ、やっぱり『君の名は。』は震災映画だったんだ、と思った。

地震直後の大川小で、教師、児童が校庭に集合して、教師たちは津波警報が出る中、その後の避難先を長々と話し合っていた。その時、一部の児童は危機感持って教師たちに「津波警報出てるから早く裏山に逃げよう」と促し続けていた。しかし教師たちの頭の中では「大津波が来る」という想定よりも「地震で崩れて裏山が危ない」という想定のほうが勝り、裏山避難は頑なに否定されることとなり、結果津波の直撃を受けることとなった。
君の名は。』でも似たような描写がある。彗星衝突を知っている主人公が村長や村民に「ここから逃げて」と呼びかける。しかし皆取り合わない。それでも必死になって訴え続けるヒロイン。
大川小の悲劇については今まで繰り返し様々なところで特集され、十分に知っていたわけだが、『君の名は。』を見る前と見た後ではやっぱり実感が違う。