高校野球の越境入学と出身地差別

 2018年8月21日放送の日本テレビの情報番組『スッキリ』にて、高校野球選手権大会で決勝まで進む快進撃を見せた金足農業高校についての特集を放送していた。その中で、金足農の教頭先生のインタビューVTRが流れ、そこでは「私立校は他県がとってることが多く、地元の子を探すのが大変。今回の野球部はスタメン全員秋田の中学出身の子供で、かなり自慢できる」などと話されていた。私はこの放送を見て少し残念な気分になった。
 1つ、越境入学について、これは現場の教師が批判的にも聞こえるコメントを出すことではないだろう。大阪桐蔭や他の私立高の生徒に対して失礼だ。
 2つ、金足農業の県外中学出身生徒が見たらどう思うのか、と考えた。県立校だから基本は県内生徒しか受験できないが、引っ越し等で高校から秋田に来た生徒もいるだろう。教頭先生も「今回の野球部は」と条件つけていたように秋田出身でない生徒は過去にも先にもいるはずだ。出身地によって「自慢できる」か「自慢できない」かを決める先生なのだろうか、と思った。これは他のスポーツでもよくあることで、五輪でハーフ選手や帰化選手が活躍した時に、「純日本人でないから素直に祝福できない」などといった書き込みが見られるようになることと同じだ。

 
 高校野球の越境入学への批判は年々高まってるような気がするが、そもそも「越境」とは何か。家族の居住地の都道府県境を越えて高校に進学することだが、何で問題になるのか。それは多くの公立高校が、都道府県立であるため、入学資格を県内に住む生徒に限定しているからだ。ここから、スポーツにおける都道府県対抗の縄張り意識が日本人に植え付けられた。私立高校はこういった縛りがないため全国から生徒を集められる。地元の市長や知事が、市外・県外の出身者でも批判する人はいないのに、高校野球だけで批判が大きくなる。
 この少子化の時代、公立校でも市外・県外生徒を受け入れる高校は出てきている。今回の教頭先生のように「全員地元の生徒だから自慢できる」というのは遅れているのではないか。将来、地元生徒しか集まらない高校は、「外から生徒を集まってこない魅力のない高校」というレッテルを貼られてしまうのではないか。