破線のマリスが裁判にまで

野沢尚の小説「破線のマリス」。
出席した葬式の会場でたまたま笑顔を見せてしまったところを映像に撮られ、マスコミの切り貼り報道によって無実の罪を着せられ追い込まれていく官僚が描かれてる。


2012/3/19のフジテレビ「とくダネ!」を見て思い出した。
大阪2児虐待死の裁判のニュース。判決文の中で、下村早苗被告が2児を閉じ込めて遊び歩いていたときに笑って写真に写っていたことが許しがたい、みたいなことを裁判長が言っていたという(「大阪2児放置事件の裁判を担当した裁判長は、被告が50日間わが子を放置していた間の写真を見て、それだけで非難に値するものだと語った」)。それが懲役30年の厳罰につながったと。実際は他の論点により求刑よりは減刑されてるが。


遊び歩いていたことが許しがたい、なら分かるが、笑顔で写真に写っていたことを責められても。どんなに気持ちが落ち込んでいてもカメラ向けられたら条件反射として笑顔の一つくらい返すだろう。こういう写真がとられているから、こういう映像が残っているから、という理由で裁判で人間性が決められる。今や携帯電話などを通じて万人がカメラを持ち歩き、いつでも写真・映像を撮れる時代、気の休まるときがなさすぎる。監視カメラの強化には賛成なんだけど、写真や映像に残る表情について裁判でとやかく言われたくない。