2014年自民党のメディアへの要請と2012年共産党のメディアへの要請の違い

自民党がテレビ局の選挙報道で「公平性」を要請したことが話題となりメディアの間で問題視されている。発端となったのは上杉隆氏が率いるメディア「NO BORDER」の記事。

【衝撃スクープ】安倍政権が在京キー局に報道圧力 メディアは一切報じず | NO BORDER - ノーボーダー | 境界なき記者団
http://no-border.co.jp/archives/29109/

以降、マスコミによる裏付けも取られ、大手新聞社による報道が始まる。どれも、要請により報道が萎縮するのではないかと懸念する記事になっている。


そんな中、ネット上の自民党支持者の間では、2年前の総選挙の際の共産党が出した「公平性」の要請文書が持ちだされ、「共産党は批判しないのか」と自民党の要請を批判していた層を批判している。

公平・公正な報道を/共産党 TV各局に申し入れ - 赤旗
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-11-27/2012112702_01_1.html

典型的なブックマークコメント

自民党の申し入れに対してギャーギャー言ってた人、二年前の共産党のこれも不当な介入なんですよね?


はてなブックマーク - 公平・公正な報道を/共産党 TV各局に申し入れ
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-11-27/2012112702_01_1.html


マスメディアは、自民党の他に野党も「公平性」を要請する文書を出していたことも報じている。

テレビ東京高橋雄一社長は27日の定例会見で、「こうした要請はこれまでの選挙でもいろんな党から来ている」と話し


選挙報道「公正に」 自民、テレビ各社に要望文書:朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/articles/ASGCW5W6VGCWUCVL010.html

こうした要望は、選挙のたびに各政党が行っているが


衆院選:自民 テレビ局の選挙報道で細かく公平性要請 - 毎日新聞
http://mainichi.jp/select/news/20141128k0000m040069000c.html


その上で、マスメディアは自民党の「公平性」の要請内容を批判している。今回の自民党の要請は今までの他の党の要請とどこが違って、何が問題視されているのか、毎日新聞記事が理解しやすい

街頭インタビューの集め方など、番組の構成について細かに注意を求める内容は異例。編集権への介入に当たると懸念の声もあがっている。


衆院選:自民 テレビ局の選挙報道で細かく公平性要請 - 毎日新聞
http://mainichi.jp/select/news/20141128k0000m040069000c.html

こうした要望は、選挙のたびに各政党が行っているが、公示前は珍しい。


衆院選:自民 テレビ局の選挙報道で細かく公平性要請 - 毎日新聞
http://mainichi.jp/select/news/20141128k0000m040069000c.html

要望書では、「過去にはあるテレビ局が政権交代実現を画策して偏向報道を行い、大きな社会問題になった事例も現実にあった」とも記し、1993年の総選挙報道が国会の証人喚問に発展したテレビ朝日の「椿問題」とみられる事例をあげ、各局の報道姿勢をけん制


衆院選:自民 テレビ局の選挙報道で細かく公平性要請 - 毎日新聞
http://mainichi.jp/select/news/20141128k0000m040069000c.html

他に、西日本新聞には自民党がこうした要請を出したこと自体が初めてだろうと、異例さが書かれていて、今回の文書がそれなりに大きなニュースになったわけも見えてくる。

萩生田光一筆頭副幹事長が自民党記者クラブに所属する各局の責任者(キャップ)を個別に呼び出し、手渡していた。自民党幹事長室は西日本新聞の取材に「こうした文書を出すのは恐らく初めてだ。


自民、選挙報道に注文 テレビ各局に異例の文書 - 西日本新聞
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/politics/article/129850


一方、共産党が2012年に出した「公平性」を求めた文書の内容は、赤旗によれば、自民党民主党を特別扱いするな、少数政党の主張も細かく伝えろ、という内容とのこと。

(1)民主党自民党に呼びかけている「党首討論」を特別扱いしない(2)選挙報道・企画では、いわゆる「二大政党」や「第三極」を特別扱いせず、各党を平等、公平・公正に扱うこと―の2点を要請しました。


公平・公正な報道を/共産党 TV各局に申し入れ
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-11-27/2012112702_01_1.html


では、野党の「公平性」要請文書の中に、今回自民党の要請で問題視されている、街頭インタビューの集め方などへの具体的指摘、過去の選挙報道「事件」を例に上げての警告が入っていたのかというと、そういう情報は現状ない。


また、一般に今回自民党の要請が批判されている理由は自民党が現政権政党であるからである。

報道内容をそれぞれの立場で吟味し、最終的に投票先を決める。政権が公正中立を定義するようなことになれば、報道は政府の宣伝の道具になりかねない。


東京新聞:自民の「公正」要請 TV報道、萎縮させるな:社説・コラム(TOKYO Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014112902000168.html


ネットニュースサイト・弁護士ドットコムではこれら問題の指摘がまとめられている。自民党幹部が直接テレビ局員を呼び出して文章を渡す際、口頭で注意した点も異例としている。

二つ目は、文書を一方的に送るという形ではなく、自民党記者クラブに所属する各テレビ局の責任者を個別に呼び出して、文書を直接手渡したという点です。今回は口頭でも、いろいろ注文をつけたようですね。これは、要望という範囲を超えていて、「恫喝」という印象を与えかねないものです。
(略)

時の政権与党がメディアの責任者を呼び出して「恫喝」めいた文章を渡し、テレビ局も、その事実を報道することもなく、黙って従っている。現政権とメディアの関係は、完全な「上下関係」ともいえる段階に来ていますね。


<自民要望書問題>「現政権とメディアは完全な上下関係」田島泰彦教授インタビュー|弁護士ドットコムニュース
http://www.bengo4.com/topics/2357/