安保改正法案の「対案」とは

集団的自衛権を認める安全保障改正法案が成立する。賛成派は反対する野党に「対案を出せ」と要求する。野党は「そもそも違憲法案に対案は必要ない」と拒絶する。それはその通りだが、実のところは民主党は党内で安全保障分野の方向性を一つにまとめあげられない事情もある。そんな点が見透かされた結果、自民党の支持が下がっても民主党の支持率が上がらない。そんなことを考えつつも、やはり今回の安保改正案に反対する上においては対案は必要ない。安倍政権が掲げた改正する理由そのものにケチがついてるのだから「現状維持」が野党の対案となる。一方で賛成でも反対でもなく国会の出来事をニュースで見ている層に、野党は「現状の安全保障の法律の枠内で、または集団的自衛権を禁止する憲法解釈の枠内で、国際貢献も国家防衛も十分に可能である」という主張をアピールできていない。野党がしなければいけなかったのはそういうアピールであったにもかかわらず。安倍首相が野党からの質問に常に同じ言葉で繰り返し自説を述べることで答弁するのに対し、野党の主張は繰り返されない。結果、主張は届かずに「対案がない」というイメージばかり流布してしまう。安倍首相を見習って毎日のように自党のアピールを質疑の時間にしておくべきであった。