条文だけを資料に憲法改正を議論させる授業

2015年5月3日のNHKおはよう日本」は、憲法記念日に合わせて憲法をテーマにした特集を放送していた。憲法改正の賛否を問う国民投票が近づく中、高校で憲法改正について生徒にディベートさせている教師にNHKカメラが密着していた。クラスで班分けし、どの憲法の条文をどう改正するべきか、あるいはしないべきかを話しあわせ、最後に憲法改正するか、しないかをクラス内で投票するという授業を行っているという。生徒が話し合う内容はやはり9条についてが多いそうだ。
気になったのは、生徒の話し合いが憲法の条文だけを資料に使って行われているようだということだ。できて70年近くたつ日本国憲法だが、条文そのものは改正されていないにしても、裁判所や時の政権によって条文解釈が何度も更新されている。最近出てきた社会問題への対応にしても、憲法に書かれていなくても法律でカバーされている。そういう点を生徒に教えないで、条文だけを読ませて「憲法を改正するべきか否か」を判断させようとしても全くフェアではないし改正の正しい意味が生徒に伝わらないのではないか。特集では生徒のコメントが賛成反対両側からいくつか流れたが、そのどれもが専門家から見れば、簡単に反論できそうな意見ばかりだった。
こういう授業は「憲法そのものを生徒に話し合わせる」よりも、憲法改正の賛成側の専門家の意見、反対側の専門家の意見を最初に見せてから、それについてどちらに納得いったか話し合わせるほうがよっぽど生徒にとって有益だ。知識がないまま、ただ「憲法改正についてどう思うか条文を読んで考えて」と言ったって、それは教師の怠慢だ。