特定秘密保護法案の反対運動と報道の支持できなかったところ

先日成立した特定秘密保護法。反対運動が活発でテレビ報道ではどこも否定的。新聞も産経、読売以外は否定的。そして自分も否定的。テレビ報道、特にTBSなんかはここ数日、国会前の反対デモの様子を毎日のように伝えていた。
で、法案へ反対する動きを報道するのはいいのだけれど、報道で見られる国会前の反対デモとか何度も見ていると「この人達、法案のどこに反対しているの」って気分になってくる。「秘密保護法案はんたーい!」というコールしか聞こえてこないから。
主な野党もマスコミも秘密保護法の設置には反対していないはずじゃなかったか。少し前までは「特定秘密の保護は重要だが、この自民党法案の条文はあんまりだ」というスタンスで。だから維新とみんなは修正協議に参加し、民主党衆院可決の時は対案を出していた。衆院可決前は、テレビでも自民案と民主案の対比なんてやってるのを見た。
それが衆院可決以後は、「法案成立はんたーい!」一色だ。運動や報道が「自民法案に反対」から「特定秘密保護法に反対」に変わってしまった。いや、中で活動してる人のスタンスは変わっていないかもしれないが、外で見てる人が受ける印象は変わる。報道される国会デモやそれを支持する報道を見ると、「特定秘密保護法の設置そのものに反対」という内容に見える。
だから成立してしまった今、「自民法案」に反対していたデモ参加者や著名人、マスコミ、野党各党は、単に「特定秘密保護法に反対」していた人たちとして一緒くたにされてしまう。修正合意していた維新、みんなの「早期採決に反対」という理由を見れば「反対」にもいろいろあるとすぐに分かるだろうに、丸ごと「反対」のレッテルを貼られ、後に「おいおいあいつら秘密保護法に反対してたんだぜ」など国防国益を何も考えてなかったみたいに伝えられていく。
最初に戻れば、特に衆院通過して法案採決のまさにクライマックスに差し迫って皆の注目が集まるところで、「特定秘密保護法はんたーい!」とコールしてるのを見せられても、いつもの反対デモとの違いが分からないということで、コールするなら「テロ定義の『強要』条文を書き直せー!」とか「秘密指定を60年延長できる条項を外せー!」とか具体的問題点をコールすればよかったのだ。
また、デモ参加者が自民法案に反対しているのは良しとして、この人達は民主党衆院に提出していた対案とか見ているのだろうか。対案を見て「これなら安心だ」とか思えるんだろうか。あっさり否決されてしまったが民主党は「特定秘密保護法は悪法だー」と言ってるばかりじゃなく、その悪法と同目的の対案を出していたんだからもっとアピールしとけば良かったのに。「民主案には自民案の不安を取り除いてあります」って。国会前のデモ参加者やテレビ前の不安に思ってた視聴者を支持者に取り込めたかもよ。



民主党の秘密保護法案対案を考える(上) 公文書管理法改正案
http://blogos.com/article/74852/
民主党の秘密保護法案対案を考える(下) 情報適正管理3法案
http://blogos.com/article/74851/



この法律は成立してしまったが、施行されてからが本番なわけでそれこそ成立前に問題点として上がっていた「恣意的な運用」を防ぐために注意していかなきゃいけない。かつての「破防法」みたいに将来この法律の罰則適用を巡って世論を2分するような事件も起きるだろう。



追記:
似たようなことが書かれている。


特定秘密保護法反対運動で残念だった日本の知性 : アゴラ - ライブドアブログ
http://agora-web.jp/archives/1572264.html


読んで思ったけど反対運動キャンペーンをメディアが行うにしても遅すぎて「オールオアナッシング」に持ち込むしかなかったという感。国会に提出される前に、同じ規模でキャンペーンをできていればより慎重に選ばれた条文に持ち込めたかもしれないのに。結局、一番注目度が高まる本会議での議決前にしかマスコミは取り上げないし、テレビメディアが取り上げなければ問題が注目されることもなく、注目されないからもっと前からメディアでこの法律の懸念部分が熱心に取り上げられることもない。うーん。