下町ロケットのドラマ始まる前に以前書いた原作の感想を再掲

アニメ「宇宙兄弟」を見て一人の大人が暗い気持ちになる
http://d.hatena.ne.jp/rabbitbeat/20120401/1333250662
同じようなことを池井戸潤の「下町ロケット」を読んだときにも考えたことを思い出した。直木賞を受賞して世間の評価はとても高い小説で、下町の小さな町工場が紆余曲折して大手メーカーのロケット作りに携わる、という話。これも小説自体はとても面白かったのだが、一部設定でとても暗い気持ちになる。

最初にあらすじを聞いたときは、下町の中卒叩き上げの親父たちが何の知識もないところからロケット作りを目指すという話なのかと思ったら、主人公の町工場の社長は、元JAXAの設計技師でH2ロケットの打ち上げ失敗の責任をとって退職し、親の町工場を引き継いだという設定。

もともとロケット作りのエリートだったところに酷く落胆。さらに両親から引き継いだ「下町の町工場」というのが従業員1000人のそれなりに大きな会社だったことに、更に落ち込む。家族経営で職人かたぎの従業員一人か二人抱えるだけの極小町工場かと思ってた。

ロケット作りに参加できたのは、主人公がもともと優秀だったのと、親から受け継いだものが大きかったから。


主人公がエリートすぎて素直にまるごと楽しむことができない。宇宙開発に専門知識が必要なのは分かるが、そういうのは別のキャラの役割にさせて、主人公は一般市民的存在にさせたらどうか、とか思った。その点、川端裕人の「夏のロケット」は良かった。


少年ジャンプの漫画が「努力友情勝利」から「才能友情勝利」になってる、とか言われて久しいが、「才能」ある主人公じゃなきゃ物語を展開させることはできないのか。うーん。


宇宙兄弟」や「下町ロケット」は主人公と同年代の人に「夢を与える」作品じゃないな。もっと若い小中学生に読ませて、「いい大学に入っていっぱい勉強して、いい会社に入ってたくさん経験を積まないと、夢を追うことができない大人になるよ」と進路指導の教材にしよう。