映画『スチームボーイ』エンドロールの考察

大友克洋原作・監督作品『スチームボーイ』(2004年公開)。AbemaTVで無料配信されていて初視聴したのだけど、とても面白かった。出てくるキャラクター全員どこか間が抜けた部分があり敵であっても憎めず好きになる。ヒロイン(?)のスカーレットが作品内で一番成長したキャラか。

この映画のエンドロールには後日談を描いた1枚絵が複数枚流れるのだが、ちょっと難しくて一度見ただけでは何が描かれているのか分からなかった。気になってエンドロールの考察がないか調べたのだけど、ネット検索では何やら「制作費24億かかったのに興行で失敗したw」とか「ストーリーがどっかで見たような子供向けでがっかり」とか、どうでもいい感想ばかり出てきて、てんで答えが分からなかった。どっかに考察記事があるのかもしれないが、悪記事に埋もれてしまって見つからないので、しょうがないから自分で考察してみる。

 

場面1 レイが帰宅し母親や幼馴染のエマらと再開

レイは蝶ネクタイしてキレイな身なりになって馬車で帰宅。家は壊れたままだが、オハラ財団は本当に建て直してくれるのだろうか。

 

場面2 スカーレットがサイモンとアメリカへ船で帰国

スカーレットお嬢様は物憂げな表情で、レイに対して心残りがあるよう。その感情は恋なのか友情なのか分からないが、別れも成長に欠かせないイニシエーションだろう。サイモンはイギリスであれだけやりたい放題やったのに、よく帰国できたな。

 

場面3 フランスのエッフェル塔に謎の照明、スチームジェットで調べるレイ

ここからです。謎めいた展開になるのは。

現実世界でエッフェル塔が完成したのは1889年。同年のパリ万博に合わせてのこと。映画は、1851年に万博初開催となったロンドン万博をモチーフにしているが、作品内時間は1866年。パラレルワールドになっている。スチーム世界では、1866年の初開催のロンドン万博の数年後に開かれた次の万博がフランス万博なのだろうか。

そのエッフェル塔のてっぺんが光っている。強い光源があるようだ。野次馬もできている。時間は夜中。レイはスチームジェットを背負ってエッフェル塔に飛んでいく。光源の元にたどり着く。歯車でできた不気味な機械の先に光源があった。

 

場面4 電球(?)をおじいちゃんのロイドに見せるレイ
この場面だけ見ると、ロイドがレイに電球(?)を託している感じもするが、前場面からのつながりを考えると、エッフェル塔のてっぺんの光源がこの電球(?)なのだろう。それをロイドに見せて、意見を聞こうとしている場面ではないか。
現実世界で白熱電球が発明されるのは1878年エジソンが作ったのは1879年だ。もちろん映画内では電気ではなく蒸気で科学が栄えた世界。この電球(?)も蒸気で光っている明かりではないか。スチームライトと呼ぼう。
 
場面5 ロイドのお墓に参拝するレイ
ロイド博士は死んでしまったらしい。墓石には「1801-1869」と刻まれている。享年68歳。映画本編の年代が1866年なので、あれから3年経ってることになる。
レイが墓石の前に行くと、ロイドの魂が両腕を広げて何かを訴えている。何かを止めようとしている風にも見える。
 
場面6 蒸気で走る巨大な乗り物の間を走り抜けるレイ
戦いが始まっているようだ。レイの両側を走っているのは蒸気戦車だろう。レイは飛行服を着ている。
 
場面7 線路を猛スピードで走る巨大な蒸気機関車
これも軍事用に見える
 
場面8 大量のパラシュートが降下する中、塹壕で迎え撃つ兵士たち。
塹壕といえば第一次世界大戦(1914年-)。これをモチーフにした場面だろう。塹壕にいるのはイギリス軍? パラシュートがとにかく大量。
もう一枚の絵で、パラシュートの中身が明かされる。場面3に出てきたスチームライト。これが大量に降ってきていて、兵士たちはこれを狙い撃ってるようだ。
(スチームライトを明かりにして敵を狙っているなんて場面ではないだろう。逆に敵に狙い撃ちされてしまう危険になるし)
 
場面9 謎の男の前にスチームジェットで降り立つレイ
場所は何か巨大な建物の前。レイと男を群衆が囲んでいる。男は誰だろう。レイの父親のエディなのか?
場面10 巨大なビルが映し出され、白いシルクハットの男の後ろ姿が映る
ビルは何? エンパイアステートビル(1931年建設)に似ている感じがする。
男は誰? 場面9の男と同一人物? 父親のエディでいいの? でも髪はふさふさな感じ。
 
場面11 飛行船の大群。1隻の船が爆発。赤服と青服の二人がスチームジェットで空を飛んで、その爆発を見ている。
赤服がレイだとして、青服は誰? レイに仲間ができたのか。飛行船を助けようとしている?
そもそも飛行船は何をやろうとして大量に集まっているのか。軍船には見えない。飛行船レース?
 
場面12 巨大なプロペラ機「スカーレット号」を前に記念撮影するパイロット姿のスカーレットお嬢様と犬のコロンブス
スチーム世界で初めての飛行機?オハラ財団が作ったの?スカーレット自らがパイロット。コロンブス生きてた*1。右端にいるのはサイモンか。スカーレットは金髪から赤毛に髪を染めていた。もしかして金髪が染めていたほうで、染めるのをやめたのかもしれない。表情は自信ありげで生き生きとしている。自分を持っている女性に成長した感じ。
 
 
エンディングクレジットのシーンの物語をまとめると、
パリ万博でエッフェル塔の上に、スチームライトで動く謎の敵機械が出現。レイが出動して倒して、スチームライトをゲット。祖父のロイド博士に見てもらう。ロイドは、これは非常に危険なものだから、これを兵器として使おうとする者を止めるのじゃ、とレイに言い残し息を引き取る。
敵が攻めてきた。エッフェル塔にいた敵機械兵器がパラシュートで大量に降ってくる。塹壕から撃ち落とすイギリス軍。レイもスチームジェットで出動。
黒幕と見られる男のもとへたどり着くレイ。黒幕は父親のエディだった。スチーム城崩壊後、フランスに逃げ延び、スチーム兵器開発に携わっていたのだ。巨大ビルでエディと戦うレイ。
エディと決着つけた後、レイは仲間とスチームジェットチームを作り、人助けをしていた。レース中の飛行船が爆発、そのレスキューへと向かう。
一方、スカーレットは、レイと別れた後、お嬢様でいるのをやめて、髪は地毛の赤毛のままにし、オハラ財団で開発中の飛行機パイロットを目指す決意をし、その夢を叶える。
どうだろうか。