めざましテレビととくダネの鉢呂失言報道が酷い

2011/9/12のフジテレビ『めざましテレビ』。

7時台のトップニュースは鉢呂前経産大臣の辞任についてだった。その中で、辞任の原因となった失言のひとつは「放射能を分けてやる」という発言だった、と報じられたのだが、その伝え方が酷かった。黒地におどろおどろしいフォントで「放射能を分けてやる」の白いテロップ。普通のニュースでは「『放射能を移すぞ』という趣旨の発言」などとナレーションで読み上げるだけのところを、めざましではナレーションの森功至さんが何故か張り切って、悪役ジジイキャラになりきり、しわがれてニヤついた声で「放射能を分けてやる」にアテレコ。
すごい!まるでその場で鉢呂前大臣のセリフを聞いてるみたい!(棒読み)
スタッフは、なんのために他のニュースが「趣旨の発言」としているのか分かっているのだろうか?実際に発言を聞いたはずの鉢呂番の記者が所属している新聞各社だって発言内容統一できてないのに、「分けてやる」に断定して、しかも実際にどう喋ったかまで悪意あるナレーションで再現するなんて。
前にイラついたNHKの悪意ある吹き替えはドキュメンタリーだったからまだマシだったけど、報道でこんな再現ナレーションは禁止にしてくれ。
参考実況 ◆ フジテレビ 60485

同日の『とくダネ!』

こちらもトップは鉢呂辞任。こっちでは、もう一つの発言のほうの報じ方が気になった。鉢呂前大臣の「死のまちだった」という発言の「まち」の部分を「町」とテロップで表記していたことが恣意的だなぁとマスコミの下衆さを感じた。
私が発言を聞いて真っ先に思い浮かべた漢字は「死の街」だ。「死の街」と「死の町」じゃ受け取り方が全然違うでしょう。「町」だとしたら原発で避難している双葉町浪江町大熊町といった自治体のほうを思い浮かべてしまう。「死のまちだった」→「死の町だった」→「双葉町大熊町浪江町)は死んでいる」と受け止められたら、そりゃ被災住民は怒るだろう。双葉町大熊町浪江町も分散しつつも自治体として生きているわけだから。
でも「死の街」だったら原状を表す普通の表現だ。住民が避難して人っ子ひとりいなくなって生活音が全くなくなった「街」は死んでいると表現しておかしくない。現に産経新聞は、南相馬市を「ゴーストタウン」と表現しているではないか。
裏番組のテレビ朝日モーニングバード!」は、「死のまち」と「まち」の部分を平仮名にして報道していた。「街」でいいと思うのだが、「街」だと叩く意味がなくなってしまうと判断したのか。会見で漢字を指定したわけではないし、釈明会見でも漢字については出てこなかったので、受け取り手次第ということで、平仮名の「死のまち」は中立案かもしれない。
なんとなく自民党政権の閣僚が同じことで叩かれていたら、会見ではっきりと漢字まで指定しただろうなぁ、と思った。麻生元首相が「皆さん勘違いしてらっしゃるが私が言ったのは「町」ではなく行人偏の「街」のほうです」みたいに言ってる様が浮かぶ。民主はマスコミと一丸になって政権についたせいか記者のやりこませ方が下手な気がする。

毎日新聞の「鉢呂経産相:8日夜の報道陣とのやりとり」について

どんな状況で「放射能がついたぞ」とか「分けてやる」なんて言ったのか疑問に思ってる中、毎日新聞が当時の発言記録を掲載した。

8日夜の鉢呂経産相と報道陣の主なやりとりは次の通り。


 Q (福島第1原発の)視察どうでした?

 A やっぱり、ひどいと感じた。(記者に突然、服をなすりつけてきて)放射能をつけたぞ。いろいろ回ったけど、除染をしないと始まらないな。除染をしっかりしないといけないと思った。

 Q 予算措置は?

 A あす、予備費の2200億の関連で閣議決定する。それでも足りないよね。じゃ、おやすみ。


毎日新聞 2011年9月10日 東京朝刊

鉢呂経産相:8日夜の報道陣とのやりとり - 毎日jp(毎日新聞)


発言の詳細は報道によって違うけど「放射能〇〇」という発言はあったんだろう。曖昧な報道が多い中で、毎日新聞は発言の前後の詳細を載せている。
だけど、この記事、客観的に発言だけを箇条書きしてるように見せかけて酷い主観が入ってる。
「(記者に突然、服をなすりつけてきて)」って、なすりつける動作ってどういう動作よ?鉢呂前大臣はあいまいだけど「擦り付けてというようなことはなくて」と否定している。では、毎日新聞の記者は、鉢呂前大臣のどういう動作を「なすりつけてきて」と解釈したのか、大臣の一挙手一投足まで思い出して書き起こすべきだ。
鉢呂前大臣が腕を記者の服に押し付けてゴシゴシとしたならば、「なすりつけてきて」でいいだろう。仮に、腕を記者のほうに向けて軽く上げる動作だったならば、また別の解釈も成り立つ。「(記者に腕をなすりつけて)『放射能をつけたぞ』」ではなく、「(自分の腕を記者に見せつけて)『(俺の体にも)放射能をつけたぞ』」という解釈。原発周辺をいろいろ回って自分の体にも放射能をつけて放射能汚染の酷さを実感した。復興には除染をしないと始まらないな。というわけだ。
とにかく「(記者に突然、服をなすりつけてきて)」というだけじゃいただけない。当時現場にいた記者は今すぐ会見を開いて正確な事実関係を明らかにしてほしい。

2011/9/12のテレビ朝日モーニングバード!」

トップニュースは鉢呂辞任。辞任会見を流していたが「とくダネ!」とは違って、匿名記者が「説明しろって言ってんだよ!」とぶち切れる場面と、それを田中龍作氏が諫める場面まで流したみたい。コメンテーターとして出演していた青木理氏が「記者会見というのは事実会見を聞く場。鉢呂議員の会見であの記者の言い方は酷い」と批判すると、司会の羽鳥さんも「あの人は、あの質問は酷い。あの人こそ出てきてほしいですね。同じ立場として許せない」などとコメント。やっぱり同じマスコミの人でもあの暴言は有り得ないのね。あの会見に同席していた他の記者は、暴言記者よりもそれを注意した田中龍作氏のほうを冷めた目で見てた気がしたけど。

同日のTBS「朝ズバッ」

8時マタギのコーナーで鉢呂辞任ニュース。野党が野田首相任命責任を問う、というパネルのところで、みのが「また空転するんですか」と質問。解説に来ていた共同通信の柿崎明二氏が「なぜすぐ辞める人を大臣につけたか首相の口から説明してもらわなければいけないので」任命責任を問うことは必要、と説明。それはその通り。質問して説明もらって批評して、その後復興に向けた議論をすればいいだけだ。かつての野党みたいに「任命責任を問う」こと一色にならなければいいだけ。みのが「(臨時)国会は4日間だけですか(復興の議論は?)」と質問。柿崎氏が「復興の実務は各予算委員会で議論されるので」と回答。みのが被災地復興を早くしてと嘆く被災者の声を拾い、「町も市も県もお金がないなら、国が予算つけて早く片付ければいいじゃない」とみの節さく裂。国もお金ないんだけど、と思わずツッコミ。コメンテーターの人が「全部、震災前の状態に復興させることは無理なので、今どこの港に集約するとか話し合われていて、それが遅れている」とみのの意見を否定することなく解説。みののコメントを聞いても役に立たないけど、バックがしっかりしてるなぁ、と思った。