芸能界と暴力団 テレビ局の責任を追求する新聞

昨日と今日と2日続けて地元新聞に「美空ひばり」の名前が載った。
国民的歌手とか素晴らしい歌声とかそういう話題ではなくて、例の島田紳助絡みのことで。


昨日の記事にいいこと書いてあるがネットに掲載されていない。Twitterを見ると京都新聞にも同じ記事が載ったそうなので、多分共同通信の配信記事なのだろう。せっかくなのでスクラップ代わりに書き起こす。

暴力団排除
遅れる芸能界

 多くのテレビ番組で司会を務めていたタレント島田紳助さんの突然の引退に、各局は番組の差し替えなどに大わらわ。だが、原因となった暴力団関係者との交際は、テレビ界、芸能界にさらに深く黒い影を落とす。華やかな成長を続け、来年には創業100周年を迎える吉本興業にとっても、隙あらば取り入ろうとする暴力団排除の難しさを、見せつけられた形だ。
 利権ある限り
 暴力団と芸能界の親密な関係は、古くから指摘されてきた。日本最大の指定暴力団山口組は、美空ひばりさんらを抱えた「神戸芸能社」で資金力をつけた。
 「演芸の世界でも、戦前の寄席時代から各地で興行のノウハウを持つ暴力団との結び付きが強まった」と指摘するのは、「吉本興業の正体」の著書がある作家の増田晶文氏。「暴力団にとって芸能人は利用価値があり、ビジネスやギャンブルなど、言葉巧みに近づいてくる。利権がある限り、暴力団と芸能界の関係は続くだろう」
 韓流スターのイベントなどを企画していた芸能事務所の実質経営者と組員ら5人が、恐喝未遂事件で大阪府警に逮捕されたのは今年6月。府警は昨年8月にも、人気ロックバンドのメンバーが所属する芸能事務所の社長を詐欺未遂事件で逮捕したが、背後には芸能利権に群がる暴力団の存在がささやかれた。
 ただ、暴力団排除の風潮が強まった近年は関係が表面化することは少なく、「巧妙に入り込んでいて見えにくい」と、府警の捜査員は言う。「表沙汰になるのは脇が甘い証拠。大きな組織ほど巧妙に、わからないように芸能事務所と関わり合っている」と話す。
うわさ絶えず
 大阪を中心に成功した吉本は、1980年の「MANZAIブーム」をきっかけに本格的に東京に進出。全国の主要都市にも、次々と事務所を設置した。90年代以降は海外公演も開き、近年は米国や中国の企業と提携して番組制作やコンテンツ開発、人材育成も手がけるなど、一貫した拡大化路線を歩んできた。
 しかし、2007年には同社所属のベテラン漫才師、中田カウスさんの暴力団との親交を指摘する報道があり、社の幹部が全面否定するなど、常に真偽不明のうわさにさらされてきた。
 「誰もが笑顔と笑い声をもてる社会の実現」をスローガンに掲げる吉本にとって、相いれないイメージ。同社は反社会的勢力の排除をうたった「企業行動憲章」を公表し、03年には社内にコンプライアンス委員会を発足させている。所属タレントは「お笑いの世界は特別、という感覚を取り除くため」(広報担当者)、全員が年1回の研修を受けるという。
 だが、大阪府警暴力団対策の幹部は、「芸能界やテレビ局が(取引先との契約書などに盛り込む)暴力団排除条項の制定に積極的だという話は聞かない。遅れている分野だ」と指摘する。
 島田さんの引退は「吉本にとって芸人は交換可能なパーツ。紳助というエンジンのようなパーツでも同様で、吉本らしい対応」(増田氏)という見方も。だが、今や国内最大のエンターテイメント企業となった吉本の"公共性"は昭和初期の比ではない。芸能界の模範となるような、さらに積極的な暴力団排除対策が求められる。

まとめると
美空ひばりの時代から芸能界と暴力団の関係は深い。
暴力団排除の動きが強まった近年は巧妙に芸能界と関係を持っていて表面化しにくい。
・芸能界やテレビ局が積極的に暴力団排除の動きをすることはない。
ということで芸能界とテレビ局に今のところ自浄作用がいっさいないということ。
共同通信では警察幹部の言葉を使い、

大阪府警暴力団対策の幹部は、「芸能界やテレビ局が(取引先との契約書などに盛り込む)暴力団排除条項の制定に積極的だという話は聞かない。遅れている分野だ」と指摘する。

と厳しい指摘をしている。



朝日新聞では8/25付けの社説で、放送界の体質を問題視している。

 日本弁護士連合会の対策チームでは、芸能界の暴力団排除が不十分とみて、昨年度から、テレビ局などを対象にヒアリングを始めていたという。



 今回のことは、放送界の体質も問わずにはおかない。



 島田さんは7年前、傷害事件で30万円の罰金刑を受けたことがある。このときは2カ月余の謹慎で復帰し、「早すぎる」との批判も受けていた。


 視聴率がとれる人気者なら、多少の不祥事は形ばかりの謹慎で済ませ、よからぬうわさには目をつむりたい。そんな空気がテレビ局にあるのだとしたら、お笑い番組にも笑えない。

http://www.asahi.com/paper/editorial20110825.html

読売新聞では、疑惑のあるタレントを積極的に起用し続けたテレビ局の責任を追求。

 暴力団山口組の最高幹部との交際を理由に引退した人気タレント、島田紳助(本名・長谷川公彦)さん(55)を巡っては、以前から暴力団との関係が取りざたされていた。


 だが、各テレビ局で、島田さんの出演場面が減ることはなかった。「黒い交際」の疑惑は放置されたのか。


 2007年、島田さんと、今回問題になった幹部とのつながりを巡る記事が、複数の週刊誌に相次ぎ掲載された。


 当時について、18年間続く「クイズ!紳助くん」を制作する朝日放送広報部は「その記事を把握していたかどうかは不明」とする。


 一方、あるテレビ局幹部は「局側がタレントを調べるわけにもいかず、事務所との信頼関係に頼るしかない」と言う。


 別の局の制作幹部は「あってもおかしくないとは薄々感じていたが、積極的に尋ねようという雰囲気にはならなかった」。その理由を「紳助さんが吉本興業の大物だということが大きい」とし、「近年のバラエティー番組ブームを先導しているのは吉本のタレント。その源泉は視聴率だ」と明かした。


 島田さんが所属していた吉本興業は、こうした記事が出る度に、同社のコンプライアンス推進委員会の調査チームで島田さんから事情を聞いた。その結果、幹部との面識がある程度で、問題となるレベルではないと判断。その上で、交流しないよう忠告してきたという。


 しかし今月中旬、幹部との親密さをうかがわせるような携帯メールを知人と交わしていたことが判明したため、再度聴取した結果、今回の引退に至った。

http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20110825-OYT1T01093.htm


中国新聞(地方紙)では、テレビ局に健全なタレント起用を求める。


 芸能界では「氷山の一角」との見方もある。


 芸能界と暴力団との結び付きは古い。戦後、山口組が芸能プロダクションを旗揚げし、美空ひばりさんらを専属歌手として抱えた話はつとに知られる。近年も、大物演歌歌手が組長とゴルフコンペに参加していたことなど、黒い交際が取り沙汰されている。


 放送局に責任は全くなかったと言い切れるだろうか。


 島田さんが出演していたレギュラー番組は6本。民放各社は内容の差し替えや、番組の打ち切りを検討するなどしている。だが一番の被害者は、後味の悪い不始末に付き合わされた視聴者である。


 人気者に頼った番組作りに傾斜するあまり、見て見ぬふりをしていたとすれば問題だ。疑わしいことがあれば起用しないなど、健全な土壌づくりが求められよう。芸能界の自浄作用にもつながる。

http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh201108260068.html


しんぶん赤旗は、暴力団と関係ある人物を視聴率のために使い続けたテレビ局の姿勢を問う。また引退会見後のテレビ番組の報道内容も「暴力団に甘すぎる」と問題視。

 こうした芸能界の問題点を知りながら、島田さんのような人物を視聴率が取れるからと、無批判に重用してきたテレビ局の姿勢も問われます。


 芸能界だけではなくスポーツ界、経済界、政界と暴力団との癒着は“表社会”のあらゆるところで噴出しています。暴力団との「持ちつ持たれつ」の関係は絶対に許されない。この社会的合意を強めることが求められています。 

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テレビ自身が甘い体質
 島田紳助さんの引退表明会見以降、テレビはその模様をいっせいに伝えました。しかし、肝心の暴力団との関係への追及はほとんどなく、“引退を惜しむ”式の報道があふれています。


 島田さんは記者会見で「この程度で引退しなければならないんです」と悔しさをにじませましたが、その認識こそが問題だったのです。明らかになった事実―トラブルを解決してくれた暴力団幹部に、やはり暴力団関係者を通して、メールで感謝のメッセージを送る。自分の経営する飲食店でその幹部と「5回程度」会う。芸能人としてあってはならない大問題で、「この程度」「セーフ」ですまされる問題ではありません。物事を暴力で決着付ける暴力団との関係は、けっしてあいまいにできないことです。


 テレビは、事実関係の追及とともに、暴力団との親密な関係が、いかに倫理と道義に反するかを掘り下げるべきです。やくざを面白おかしく扱って日ごろの番組を盛り上げていることも含めて、テレビ自身に暴力団に甘い体質を感じざるを得ません。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-08-25/2011082501_04_1.html

赤旗の言うことはほんとそのとおり。ワイドショー見てても、暴力団との関係を問題視する声よりも「引退を惜しむ声」のほうが先に来て、しかも尺が長い。なんだこりゃ。
ワイドショーの内容はどの局でもワンパターン。紳助の才能を称え惜しむ5割→暴力団との関係追及2割→紳助の才能を称え惜しむ3割って感じ。パンが厚すぎるハンバーガーみたいでげんなり。
暴力団との関係を説明する部分も、島田紳助個人との関係に終始して、その先へとなかなか広がって行かない。自分も芸能界の真っ只中にいる芸能人コメンテータが他人事のようにコメントするだけ。自分も芸能界にいるんだから、周囲に暴力団関係者がいるかいないかくらいは言え。
解説するテレビ局アナウンサーが、昔から地方興行で暴力団と芸能界の関係は深かった、と芸能界と暴力団の関係を指摘するが、その暴力団と付き合ってる芸能人を起用し続けたテレビ局の責任は自省しない。うんざり。
(自省ではないけど、テレビ局批判を聞いたのはテレ朝のモーニングバードでの玉川さんの指摘のみ。「紳助さんが関西テレビでトラブルを抱えたとき、テレビ局が毅然とした態度で守っていれば、暴力団との関係は起こらなかった」くらい。)


テレビ局がテレビ局を批判することは全くないので、代わりに新聞が頑張ってる。といっても新聞とテレビ局はクロスオーナーシップでズブズブなんだけど。一時的な批判ではなく継続してほしい。
この前フジテレビデモがあったけど、こんな格好のネタができたんだから、次があれば是非暴力団―芸能界―テレビ局の関係を批判してください。