デザイナー「これが五輪とリエージュロゴが似てないという理由だ!」私「で?」

という感想しかわかない記事だった↓

よくわかる、なぜ「五輪とリエージュのロゴは似てない」と考えるデザイナーが多いのか?(深津貴之) - 個人 - Yahoo!ニュース
http://bylines.news.yahoo.co.jp/takayukifukatsu/20150907-00049112/


佐野エンブレムとリエージュロゴのオリジナリティの違いの説明となっている。コンペ応募時の原案からの変遷過程の正当性についても説明されているが、おおむね佐野研二郎さんや五輪組織委が最初の記者会見で話していた内容と変わらないと思った。佐野エンブレムやリエージュロゴに似ている「T」の書体があるというのは確か佐野さん自ら会見で取り上げていたと思う。アルファベットも作れちゃうぞ、という展開力にこそ独自性があるという話は会見で十分説明していたし、単純なデザインだから形は似ていてもデザインとしては似てないみたいな説明もテレビで大量に流れてた。



会見直後のテレビのワイドショーでは完全に佐野氏の説明を受け入れていた。ひるおびでも批判する者はいなかったし、ミヤネ屋では司会がコメンテーターたちに「『似ていない』という佐野さんの説明で納得いきましたか?」と質問すると、揃って「納得がいった」と答え、司会のアナが公平性から「似ていると思ったのは僕だけでしたか…」とわざわざリエージュ劇場をかばわなければならない展開だった。たまにコピペされる「読売解説委員の橋本五郎が『ベルギーの劇場ロゴは葬式みたいに暗い。佐野さんのエンブレムは結婚式みたいに華やか』と劇場批判」というコピペ発言はこの回のミヤネ屋で生まれたものだ。



ブコメでは「最初からこの説明あれば」「こんだけ説明しても分からない奴は分からない」なんて意見が出る。

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しかし前段落までに書いたように、最初から十分に説明されているし、その説明は一時的ではあるがしっかり理解されていたのだ。ほとんどの国民はこの最初の記者会見までは佐野氏の説明に理解を示し受け入れていた。ああいったブコメは、それでも佐野氏への不信が募って取り下げ運動が盛り上がった、という点を完全に無視している。



トートバッグデザインの盗用問題から始まり、太田市美術館のロゴアイデアパクリ疑惑、五輪エンブレムの展開例の写真盗用、多摩美術大学ポスターの写真盗用疑惑、といろいろ出てくる過程でエンブレムデザインの可否以前にデザイナーの佐野氏本人への不信が強まり、会見で説明した内容は本当なのか?と疑う声が強くなった。エンブレムコンペ審査員の関係図なんてのが広まったのは佐野氏への不信の結果。



会見で「パクリをしたことない」と断言した本人が「パクリ」をしていた。盗用問題がはっきりするとマスメディアは一転批判を始めた。会見で嘘をついた人にマスコミは厳しい。先のひるおびもミヤネ屋も既に佐野氏本人をかばうではなく「説明しろ」「エンブレムのイメージ悪くなるのが心配」といった論調だ。こうもはっきり会見での発言と違う事実が出てきたのだから、他の発言も疑って当然だ。
・五輪エンブレムの製作過程の説明は本当か。後付けではないのか
リエージュ劇場のロゴを見たことないというのは本当か



このうち製作過程については嘘とは言えないが会見では隠されていた事実が後に出てきた。コンペ応募時は全く違うデザインで、会見で強調していた亀倉雄策の円のイメージがなかったという点だ。さらにこの元デザインがヤン・ヒチョルト展のポスターデザインのTのフォントとそっくりだったということで、更に「他人のアイデア・素材を盗用する人」というイメージが強化され信頼感が完全に失われた。更に疑問なのは原案を公開した会見でパラリンピックの原案が公開されなかったという点。佐野エンブレムの独自性としてパラリンピックエンブレムと一対になっているという点が挙げられていたが、セットとなるパラの原案が公開されなかったということは当初パラリンピックエンブレムは全然デザインが違っていた可能性を疑ってしまう。



最初の記事で「デザイン業界は説明とコミュニケーションを怠り」とあるが説明は本人の口からもさんざんされているのだ。佐野氏のエンブレムデザインとリエージュ劇場ロゴデザインが「形は似ているけど似ていない」という佐野氏本人や数多のデザイナーたちによる説明は十分理解された上で、佐野氏によるデザインは「五輪にふさわしくない」と判断され白紙撤回されている。数々の問題、疑惑により佐野氏本人の「劇場ロゴを見たことないからアイデアでもパクリようがない」などという説明が信用ならないとされたからエンブレム撤回運動が盛り上がった。この白紙撤回判断を批判するならば、トートバッグデザイン、展開例写真といった盗用問題を起こす作家でも、五輪エンブレムデザイナーとして問題ない理由を述べなければならない。また「佐野氏は盗用していても会見での五輪エンブレムに関する説明にいっさい嘘はない」という点を相手に理解されるよう主張しなければならない。これはこれでいくらでも記事は書けそうではあるが中々はっきり書かれた文章は少ないかと思う。



佐野氏の仕事での盗用が発覚した今となっては一般国民の関心のあるところとしては、佐野エンブレムとリエージュロゴが似ているのか似ていないのかではなく、佐野氏はリエージュロゴなりヒチョルト展ポスターを「パクった」のか「パクってない」のかであり、いくつか可能性を挙げると、1.全く盗用してないし参考にしてもいないしリエージュロゴもヒチョルト展ポスターも関係ない。2.盗用も参考もした覚えはないがロゴやポスターは見たことあり無意識的に似たデザインになった。3.意識的にロゴやポスターを参考にしデザインし独自性を加えた。4.意識的にロゴやポスターを盗用するつもりだった。など考えられる。しかしこういう「先行作品をパクった」的な話は、本人しか知らないことで、外部からパクリが「ある」ことも「ない」ことも完全に証明できず不信の念は絶対に消えない。そこで現時点で佐野エンブレム案を肯定するのなら「仮に佐野氏がベルギー劇場のロゴを参考にしてエンブレムを完成させていたとしても、エンブレムには佐野氏の独自性が加えられており、法的にもデザイン的にも佐野氏のオリジナルデザインとして五輪使用にも問題ない」という主張をする以外にはないのかとも思う。