現代もののNHK朝ドラで出産・子育てを描くのは鬼門か

「まれ」の話。
NHK朝の連続テレビ小説としては「あまちゃん」以来の現代もの。
ネットでは久々にアンチが多勢になってるドラマ。
キャストの一挙手一投足全てに批判を受ける。
ヒロイン希の妊娠・出産・子育てシーンも批判を受けた。「あり得ない」とか「実際の母親馬鹿にしてる」とか。
ここで過去作品の反応はどうだったかと思い返すと、時間帯変更して以来の現代ものの朝ドラでヒロインの出産・子育てを描いたのは「まれ」が初だった。「てっぱん」でも「純と愛」でも「あまちゃん」でもヒロインは出産も子育てもしていない。結婚したのは「純と愛」だけで「てっぱん」も「あまちゃん」も結婚すらしていない。
時間帯変更以前の朝ドラを全部見ていたわけではないが、うろ覚えの記憶とWikipediaを頼りに思い返すと、


「うぇるかめ」結婚、出産、子育て
「つばさ」なし
「だんだん」出産エンド
「瞳」なし
ちりとてちん」出産エンド
どんど晴れ」最初から結婚
風のハルカ」結婚エンド
「ファイト」なし
わかば」結婚、出産
天花」出産エンド
「こころ」連れ子の子育て
まんてん」結婚、出産、子育て
「さくら」なし
「ほんまもん」結婚、出産、子育て
ちゅらさん」結婚、出産、子育て
私の青空」子育て
「あすか」結婚、出産、子育て


「あすか」以降の1999年以降の現代ものドラマ17作品中、出産エンドを除く、子どもがいたヒロインは8作品。そのうち「こころ」や「私の青空」は最初から子育てを描いた作品で、ヒロインが恋愛し結婚し妊娠・出産するという話は飛ばしている。「わかば」なんかは最終週近くに娘が生まれ、子育てを描いたかというと微妙。「ちゅらさん」は子どもに悩むエピソードがしっかりあった。ということで、「まれ」と同タイプに出産後のキャリアまで描かれたのは5作品しかない。そのうち4作品が12年以上前の作品となる。
主に20〜30代の女性の生き様を描く現代ものの朝ドラであるが、結婚はしても妊娠、出産まで描く作品は少ない。たまに描いても「ちゅらさん」のように視聴率に結びつくドラマはまれだ。やはり現代ものドラマで一人の若手女優が、恋愛し、結婚し、妊娠・出産し、さらに子育てまでするヒロインを演じるのは非常に至難なわざなのだろう。さらにそれだけの、視聴者が納得できる現代ヒロインを描ける脚本家も少ないというのもあるかもしれない。
今回の「まれ」への批判は「うぇるかめ」への批判と似ている気がする。「うぇるかめ」もいろいろ迷走した脚本だった。その「うぇるかめ」も「まれ」と同じく久々に結婚、妊娠、出産後のキャリアまで描いた作品だった。「うぇるかめ」以前にこれらをしっかり描いたのは「まんてん」までさかのぼるのでないか。結果は、視聴率的に盛大に失敗し、その後、同様のヒロインは「まれ」まで出てこなくなるのだが。
「うぇるかめ」より後の朝ドラは、女一代記を描いた昭和ものばかりで、たまに現代ものをやっても結婚しないヒロインのドラマばかりになる。昭和の結婚、出産、子育ては視聴者の脳内イメージが固まっている。時代考証さえ間違えなければ「あり得ない」「こんな人いない」と批判を受けることもない。イラッとくる子育て描写があったとしても「時代が違うからねぇ」で視聴者は納得できる。現代のそれらを描くよりも気分的には楽だろう。現代の子どもを取り巻く親の環境はとにかく外野がうるさいのだ。
批判の多い「まれ」ではあるが、批判覚悟で挑んだ意欲作ともいえる。